共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
鮮新世温暖期における西南極氷床の融解履歴 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 富山大学学術研究部理学系 |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 堀川恵司 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
関宰 | 北大低温研 | 准教授 |
研究目的 | 申請者は,2019年にIODP exp. 379次航海(西南極アムンゼン沖)で採取された鮮新世温暖期の海底堆積物試料の分析から,当時の海洋環境の復元と西南極氷床の動態を解析している。現在までに非常に重要な研究成果が得られてきており,これを論文化するにあたり,アムンゼン海に隣接するロス海や南極半島東岸における当時の海洋環境の理解が,西南極氷床全体像を正確に理解する上で不可欠になってきた。そこで,ロス海と南極半島東岸のIODP試料の分析を精力的に進めている低温科学研究所の関宰准教授と情報交換を行い,論文化に必要な情報を整理したいと考えている。共同研究を通してトップジャーナルへの研究成果の公表を目指す。 |
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研究内容・成果 | 申請者は,これまでに西南極域アムンゼン沖の海底堆積物試料について,砕屑物のネオジム同位体比,ストロンチウム同位体比,鉛同位体比など高時間解像度の堆積物データ(100層準以上)を分析してきた。さらに,西南極大陸の基盤岩(100地点)と西南極縁辺域の表層堆積物(42地点)についても,砕屑物のネオジム同位体比,ストロンチウム同位体比,鉛同位体比データを分析してきた。これまでの研究で得られたデータと既存研究で報告されている同位体比データを統合することで,西南極一帯の各地域の砕屑物の同位体的特徴を把握することに成功している。このネオジム・ストロンチウム・鉛同位体比の西南極域の地球化学図を元に,U1532コアの砕屑物の供給源解析を行い,鮮新世温暖期の氷期―間氷期サイクルで西南極のどのエリアの氷床が発達・縮小していたかが初めて明らかになってきた。対象としてきた試料には,氷期―間氷期サイクルに対応した氷床の融解・崩壊を示唆する氷山起源漂流岩屑(Ice Rafted Debris)が周期的に挟在しているが,申請者が現在までに得てきた同位体比データは,氷期―間氷期サイクルでの西南極氷床の融解履歴について,かなり説得力のある地質学・地球化学的な証拠を提供するものである。これらの成果は,今年度関准教授との情報交換を通して,論文原稿の作成になった。現時点では,共著者らと原稿内容の確認を行なっているが,できる限り早急に投稿・論文出版へ繋げていきたい。 |
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成果となる論文・学会発表等 |
堀川恵司、岩井雅夫、浅原良浩、Claus-Dieter Hillenbrand、Ellen Cowan、Christine Siddoway、Anna Ruthie Halberstadt,IODP Exp 379 Scientists,砕屑物のSr-Nd-Pb同位体比分析による鮮新世の西南極氷床の動態解析,日本地球化学会2023年会,2023/9/21 HORIKAWA, Keiji, IWAI, Masao, ASAHARA, Yoshihiro, IODP Exp379 Scientists, West Antarctic Ice Sheet retreat in the glacial–interglacial cycles during the Mid Pliocene: Results from Sr-Nd-Pb isotopes, Korea-Japan Workshop on Lesson from Global and Regional Climate Change in the Paleorecords, 20 October 2023, Pusan National University, Busan, Korea |