共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

ヘキサメチレンテトラミン類縁体の合成法開発による低温光化学反応生成物の詳細解析
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門
研究代表者/職名 主任研究員
研究代表者/氏名 朝比奈健太

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

大場康弘 北大低温研

研究目的  隕石や宇宙低温環境の模擬実験生成物中には、ヘキサメチレンテトラミン(C6H12N4:HMT)が存在することが近年明らかにされてきた。これら地球外環境に存在するHMTはおもに星間分子雲など極低温環境での光化学反応によって生成し,アミノ酸や糖類など複雑有機化合物生成のカギとなる前駆体として期待されている(Oba et al. 2020)。そこで本研究では、ヘキサメチレンテトラミン類縁体の合成法を確立し、地球外環境模擬実験生成物,および地球外物質分析の標準物質として利用することを目的とした。
  
研究内容・成果  これまでの先行研究により、地球外物質や模擬実験試料中には,HMTにメチル基(-CH3)やヒドロキシメチル基(-CH2OH)などが置換した類縁体の存在も示唆されている。しかしながら、種々の置換基を有するHMT類縁体は標準物質が市販されていないため、その存在を確実に証明する方法はなく,これまでにそれらが同定・定量された例は皆無であった。
 本研究では、メチル基が置換したHMTの合成を試みた。HMTは、対照性が高いため母骨格を形成する段階で置換基を導入することが困難である。そこで我々は、市販のHMTにメチル化剤を作用させることで、メチル置換HMTを行った。これまでに、メチル置換HMTは、炭素置換体と窒素置換体の2種類の存在が示唆されている。本研究では、炭素置換体の合成を試みた。我々は、HMT上の炭素と窒素の反応性の違いを考慮し、低温でメチル化剤を作用させた。合成物を分析した結果、炭素置換体を優位に合成することができた。現在、合成物中の炭素置換体および窒素置換体の分離生成方法を検討中である。
 これまでHMT類縁体は、隕石や宇宙低温環境の模擬実験の生成物中に存在することが質量分析により示唆されてきた。しかしながら、これらの標準物質が存在しないため、信頼性に欠けていた。今後、本研究で合成した炭素置換体と窒素置換体の分離条件を確立し、隕石や模擬実験生成物の分析の標準物質として使用することで、HMT類縁体が宇宙低温環境で存在することで実証できる。
 またHMT類縁体は、分析のための標準物質としての利用のみならず、模擬実験の出発物質としても利用することができる。したがって本研究によりHMT類縁体の合成法が確立することで、太陽系構成物質の進化のより詳細な理解につながることも期待できる。
  
成果となる論文・学会発表等 なし