共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
氷相バルク微物理モデルの再検討及び降雪粒子観測とレーダーデータによるモデルの評価 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 叡啓大学 |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 山田芳則 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
|
所 属
|
職 名
|
|
1 |
川島正行 | 北大低温研 |
研究目的 | 気象モデル内の氷相過程の微物理モデルは、降雪雲の構造や降雪機構の解明、降雪量予測、気候モデル、温暖化予測モデルなどにとって非常に重要である。計算効率の観点から、高性能バなルク微物理モデルは今後も是非とも必要であろう。これまでに提案されている氷相バルク微物理モデルについて、各素過程の妥当性が十分に検討されているとはいえない。 本研究では寒気吹き出し時の降雪雲内での雪とあられの形成過程を再考して、より適切なモデルの構築を目的とする。異なる微物理モデルを用いたサブkm解像度の実験結果をレーダーデータや地上降雪粒子観測と比較する。レーダー反射強度は、地表面から等高度にある面上で解析する。 |
研究内容・成果 | 1. 方法 解析対象は、2022年に札幌で寒気吹き出し時に大雪となった2月21日の事例である。札幌管区気象台では22時から24時までの2時間の降雪量は9 cm であった。 地上降水量の解析では、XRAINの石狩レーダーデータを用いた。解析領域の広さはレーダーを中心とする 60 km x 60 km、水平解像度はレーダーのビーム幅を考慮して 1 km とした。地形データは国土地理院「数値標高モデル 10m メッシュ」から解析で用いる座標系上の格子点値を作成した(図1。科研費 19H00815 による成果)。次に、4〜6分ごとに作成した3次元走査データの反射強度を地表面から 0.3 km 上空の格子点上に内挿した。その後、22時から24時までの内挿値を各格子点で時間方向に積算した値を2時間降水量とみなした。 数値実験では気象庁非静力学モデル (NHM) を用いた。水平解像度 0.5km のモデル実験は、メソ解析を用いて実行した 2 km 解像度モデル結果にネストして、石狩レーダーサイトを中心とする 500 km x 500 km の領域で行った。鉛直層数は60層である。微物理モデルは、NHM に予め組み込まれているものと Yamada (2013)を用いた。0.5km解像度の実験では21日09UTCを初期値とした6時間予報を行い、反射強度の積算値を解析した時間帯に対応する予報時間4〜6時間までの2時間地上降水量をレーダー解析と比較した。 2. 結果 図2は、NHMに組み込まれているモデルを用いた時の降水量(右)とレーダー解析(左)との比較である。左図の陰影は積算反射強度(単位は 10 dBZ)を示す。レーダーの観測仰角の影響によりレーダーから遠方の高度の低い地点やレーダーに面していない山地の斜面上では、用いた方法による解析が困難なために積算値が得られていない。帯状になった大きな積算値の領域が札幌付近に侵入している様子は大雪と対応がよい。この他、手稲山の風上斜面上や山頂付近、暑寒別岳頂上付近、石狩平野北部でも積算値が大きい。一方、数値モデル結果では、幅が比較的狭く降水量の多い帯状の降雪域や石狩平野北部の帯状降雪域、手稲山風上斜面上での比較的多い降水量が表現されている点はレーダー観測と対応しており、札幌での大雪は再現されているように見える。図3は、Yamada (2013) のモデルを用いた結果とレーダー観測との比較である。石狩平野での帯状降雪域や札幌の南に位置する風上斜面上での降雪域は再現されているものの、降水量の集中の表現はあまりよくない。以上から、微物理モデルの違いが降水量やその分布に及ぼす効果は小さくないことが示唆された。どのようなモデルが適切であるかについては、引き続き検討が必要である。 謝辞:XRAINデータは国土交通省より提供していただいた。 |
成果となる論文・学会発表等 |