共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

生態系及び代謝経路解析に用いられるアミノ酸解析技術の高度化と新規解析基盤構築
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 国立研究開発法人海洋研究開発機構
研究代表者/職名 副主任研究員
研究代表者/氏名 澄田智美

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

布浦拓郎 海洋研究開発機構 主任研究員

2

福山宥斗 海洋研究開発機構 研究員

3

力石嘉人 北大低温研

研究目的 生態系を構成する個々の生物の機能や代謝特性の理解には、天然に存在する安定同位体や人工標識した安定同位体をトレーサーとした解析が用いられている。力石らは以前増殖効率の低い環境微生物へにも適用できる代謝解析手法(GC-MS法)の開発を行なったが、従来の方法では技術課題が残っていた。そこで本研究ではさらにオービトラップ質量分析系を用いた新規CE-MS法の開発とCE-MS法の開発の過程にて得られた知見を元に、GC-MS法の技術課題を明確化・改良を行うことで、アミノ酸解析技術の高度化及び新規解析技術基盤の構築を目指す。
  
研究内容・成果 本研究では、アミノ酸に含まれる個々の炭素を区別して同位体標識したラベル化基質を投与し、様々な極限環境微生物を培養後、アミノ酸や有機酸等の代謝産物を抽出し解析した。オービトラップ質量分析系を用いたCE-MS法の開発では、従来よりも微量の試料から高感度・高精度な測定条件を確立したため、始原的な独立栄養増殖可能な好熱性バクテリア系統のAquificae及びそのその近縁系統群と、従属栄養性超好熱バクテリアのThermotoga、従属栄養性超好熱アーキアのThermococcusを対象とした解析を実施した。主にAquificaeの解析結果を元にGC-MS法とCE-MS法の比較検証を行った。その結果、開発の過程にて、GC-MS法の手法でこれまで見過ごされてきた技術課題が発見され、解析結果に有意な影響を及ぼす可能性がわかった。試料調整時の手法的問題点の改良に関しては低温科学 79巻へ寄稿したが、さらに本年度は解析時に問題となる、これまで計算上考慮されていなかったアミノ酸を分析した際に生じていた未同定の夾雑ピークに関して検証を行った。炭素の同位体標識位置の異なる標品ラベル化基質(1-13C-Glu, 5-13C-Glu, 13C5-Gluなど)を用いて、特にクエン酸回路の機能方向の決定に重要となるAla, Asp, Gluに関して詳細な検討を行った結果、GC-MS法での夾雑ピークは、バックグラウンドではなく、既報とは異なるアミノ酸自身に由来するフラグメンテーションのピークであることが判明した。標品ラベル化基質を用いた検証でも矛盾ない結果が得られ、計算方法を改良することにより、解析精度に大幅な改善がみられた。Ala, Asp, Glu以外のアミノ酸に関しては、上記以外のフラグメント化による可能性があるため、今後様々な標品を用いたGC-MSとCE-MSによる比較解析と検証を行っていく予定である。
  
成果となる論文・学会発表等 T. Nunoura
Variation of TCA cycle and Its Contribution of Carbon Fixation in (Hyper)thermophilic Archaea and Bacteria.
Gordon Research Conference on Molecular Basis of Microbial One-Carbon Metabolism 2022 招待講演

Y. Fukuyama, T. Sumida, S. Shimamura, Y. Chiba, H. Chikaraishi, H. Atomi, and T. Nunoura
Reassimilation of CO2 and acetate in Thermotoga maritima revealed by 13C isotope tracing experiments using microfluidic capillary electrophoresis-mass spectrometry.
Gordon Research Conference on Molecular Basis of Microbial One-Carbon Metabolism 2022 口頭発表

福山宥斗, 島村繁, 澄田智美, 力石嘉人, 千葉洋子, 跡見晴幸, 布浦拓郎
微量メタボローム解析による従属栄養性超好熱バクテリアThermotogaのCO2再利用能の評価
第35回日本微生物生態学会 (2022) 口頭発表