共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

寒冷域アマモ根圏のアンモニア酸化アーキアの活性酸素に対する抗酸化作用の解明
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 日本大学
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 中川達功

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

高橋令二 日本大学 教授

2

土屋雄揮 日本大学 専任講師

3

福井学 北大低温研 教授

研究目的 近年、アマモ根圏に生息する硫黄酸化菌が猛毒の硫化水素を酸化する際にアマモ根圏のpH低下やリン酸可溶化が確認され、アンモニアの可溶化も示唆された。アマモ根圏からアンモニア酸化アーキアの一酸化窒素 (NO) 合成酵素遺伝子のmRNA量が高いことが報告され、アンモニア酸化アーキアが根の成長に関与している事が示唆されている。そこで、本研究では寒冷域アマモ根圏に生息するアンモニア酸化アーキアが発生する活性酸素に対する抗酸化作用の仕組みを解明する事を目的とした。
  
研究内容・成果 2022年9月13日に北海道の厚岸湖においてアマモとその周辺の底泥を採取した。採取後2時間以内に、根、地下茎をろ過滅菌済み海水で洗浄し、地下茎から根を切断し、その根をDNA/RNA shieldに加えた。一部の地下茎と根は未処理の状態で培養実験用に海水に浸けて研究室まで冷蔵で空輸した。底泥は0-1 cm層、1-2 cm層、2-3 cm層、3-4 cm層、4-5 cm層をそれぞれ回収し、50 mLチューブに15 mLの線まで加え、DNA/RNA shieldを15 mL加え、混ぜた。根付着AOA用の培養実験用の培地にはチオ硫酸ナトリウム、α₋ケトグルタル酸、カタラーゼ、および無添加の実験区を設定した。培地中の亜硝酸濃度はGriess-llosvay法に基づく比色定量により測定した。NO3⁻の濃度は陰イオンクロマトグラフィーで測定した。AOAの分布を調べるため、リアルタイムPCR解析と16S rDNAアンプリコンメタゲノム解析を実施した。リアルタイムPCR ではPCRプライマーはAOA、beta-proteoabacteria AOB、およびgamma-proteoabacteria AOBのamoA遺伝子を標的とした。各試料からDNAを抽出後、Nitrosopumilus zosterae NM25、およびNitrosomonas stercoris KYUHI-SのゲノムDNAを検量線用標準DNAとして用いて、アンモニアモノオキシゲナーゼアルファサブユニット(amoA)遺伝子を標的としたリアルタイムPCRを行った。16S rDNAアンプリコンメタゲノム解析では、16S rDNAのV4領域を対象として1st PCRを行い、さらに2nd PCRでindex配列を付加して、アンプリコンを得た。その後、MiSeqを用いてシークエンス解析をして、Qiime2にてデータ処理を行い、アンモニア酸化菌の群集構造を調べた。α₋ケトグルタル酸を加えた試験3本の内2本だけ亜硝酸が検出された。アマモ根におけるAOAおよびAOB密度は、定量検出限界以下であった。底泥は深くなるにつれ、AOAとAOB量が減少した。底泥におけるAOB量はAOA量よりも約10倍多かった。アマモ根圏における全原核生物に占めるAOBの割合は0.78%であったが、AOAは検出されなかった。アマモ根圏からAOBとして、Nitrosococcus属が検出された。底泥では表層において全原核生物に占めるAOAとAOBが共に最も高い割合であった(AOA, 0.03%;AOB, 0.25%)。底泥からAOAとして、Nitrosopumilaceae科が検出された。一方、底泥からAOBとして、Nitrosomonadaceae科が検出された。昨年度のアマモ根からAOAが検出されていたが、今年度はAOAはアマモ根から未検出であった。この違いの主な原因は試料採取時の水温が考えられる。
  
成果となる論文・学会発表等