共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
耕地生態系と大気環境の相互作用の解明 |
新規・継続の別 | 継続(H29年度から) |
研究代表者/所属 | 農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者/職名 | 主任研究員 |
研究代表者/氏名 | 伊川浩樹 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
石郷岡康史 | 農業・食品産業技術総合研究機構 | 主席研究員 |
2 |
桑形恒男 | 農業・食品産業技術総合研究機構 | 再雇用研究員 |
3 |
丸山篤志 | 農業・食品産業技術総合研究機構 | 上級研究員 |
4 |
小野圭介 | 農業・食品産業技術総合研究機構 | 上級研究員 |
5 |
石田祐宣 | 弘前大学 | 准教授 |
6 |
渡辺力 | 北大低温研 |
研究目的 | 近年、寒冷地を中心に地球温暖化が進行し、農耕地の気象環境や作物の生産への影響が顕在化している。さらに温暖化によって作物の栽培適地が高緯度地帯まで移動することが考えられる。また、作物の収量は、作物の生育期間における平均的な気象条件だけではなく、短期的に起こる極端な気象条件にも影響を受ける。 耕地生態系は、大気環境から影響を受けるのみならず、大気-植生-地表面間の熱・水・物質輸送を通じて、地域のエネルギーや物質の循環や局地気象の形成にも影響を与える。本研究は、大気-植生-地表面間の熱・水・物質輸送に関わる計測とモデリングの研究開発を推進することを目的とする。 |
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研究内容・成果 | 12月19日から21日にかけて研究集会をおこなった。伊川からは、北海道における積雪の観測とモデリングと局地循環モデルを使用した研究の紹介をおこなった。水輸送のモデリングの技法に関するディスカッションや、北海道の開拓の歴史と合わせた土地利用の変遷と気象の関係について、局地循環モデルを使用して考察してみるなど、将来的な研究の方向性の議論を行った。 石郷岡からは、農業研究のための長期気候データセット作成の取り組みについての紹介をおこなった。区内気象観測データとAMEDASのデータを接続し、農業研究に有効な長期気候変動データを作成するため、メタ情報の整理、地点移動の補正、データ接続の補正(バイアス)、気温以外の要素、デジタル化についての手順の説明をおこなった。 石田からは、青森県三戸町を対象として、農研機構メッシュ農業気象データによる気温データと、微地形による局所的な気温の時空間変化を比較観測した結果を報告した。観測対象とした場所において、観測された気温が農研機構メッシュ農業気象データの気温よりも夜間に1℃ほど低く、谷筋の冷気流による影響と考えられると考察した。 丸山からは、放射冷却によって形成される水稲群落における夜間の結露の観測と、群落多層モデルによるシミュレーションをもとにまとめた論文研究を紹介した。結露は主に群落の上層部でおこるが、結露の鉛直分布の勾配が急である場合と、勾配があまりない場合があり、これらは大気からの水蒸気輸送か、水面温度に依存する水蒸気輸送のバランスに依存することを報告した。 小野からは、飼料米の圃場における群落光合成と蒸発散の計測結果や、陸面フラックスの新たな計測手法の取り組みについて 紹介があった。 桑形からは、結露に関する熱収支理論的な考察の紹介をおこなった。結露は湿度だけでなく有効入力放射量と、交換速度に依存するため、仮に湿度が低い場合でも有効入力放射量が低いことで、結露がおきやすい条件もあることを紹介した。 渡辺からは、格子ボルツマン法を用いた地吹雪のシミュレーションを紹介し、地吹雪における氷粒子の跳躍、浮遊、転動といった性質に関わる粒径分布や、粒子が収束・発散する領域を持ちながら輸送される様子などがモデルによって考察できることを報告した。また、土壌が氷点下以下になる際に一度過冷却がおこり、その後凝結熱によって地温が上昇する現象を熱力学的に説明した。 研究協力者として参加した若月(農研機構)からは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6)のチャプターサイエンティストとしての役割を紹介した。現在の気候シナリオやモデルを用いた研究において、品質や環境ストレス、混植栽培についての知見が少ないことに言及した。 |
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成果となる論文・学会発表等 |
[1] Maruyama, Kuwagata and Watanabe (2023) Observations on dew formation in the rice canopy and its simulation using a multilayer microclimate model. Journal of Agricultural Meteorology [2] Ikawa et al (2023) A Model-Aided Analysis on Spring Snowmelt Timing in Alaskan Black Spruce Forests Underlain by Permafrost. International Symposium of Agricultural Meteorology 2023 |