共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

グリーンランド南東ドームアイスコアの超高解像度宇宙線生成核種分析
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 弘前大学大学院理工学研究科
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 堀内一穂

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

八木橋理子 弘前大学大学院理工学研究科 大学院修士課程学生

2

畠山匠 弘前大学大学院理工学研究科 大学院修士課程学生

3

飯塚芳徳 北大低温研 准教授

4

的場澄人 北大低温研 助教

研究目的  地球に入射する宇宙線と大気との相互作用により生成する宇宙線生成核種は、過去の宇宙線強度変動の、ひいては太陽活動や地磁気強度変動の類稀なプロキシである。また、成層圏下部でその3分の2が生成されるため、成層圏・対流圏物質交換のトレーサーにもなり得る。本研究の目的は、従来より格段に高解像度のアイスコア宇宙線生成核種記録を取得し、そのフォールアウト変動を連続的に解明することである。そのために世界で最も優れた試料として、グリーンランド南東ドームアイスコアIIを分析する。
  
研究内容・成果  本年度は、計3回に分けて、グリーンランド南東ドームアイスコアIIより一部の試料を切り分けた。切り分けは、低温科学研究所にて、コアの保管状況と年代モデルを丁寧に確認しながら、約1ヶ月の解像度が実現できるようになされた。初回の切り分けでは、グリーンランド南東ドームアイスコアIにて短区間だけ予察的に行われた宇宙線生成核種ベリリウム10の分析区間も、再度切り分けた。
 切り分け後の試料は、弘前大学の実験室にて前処理が施され、東京大学総合研究博物館の5MVタンデム加速器を用いたベリリウム10の加速器質量分析に供された。グリーンランド南東ドームアイスコアIとIIが重なる区間のベリリウム10濃度は、大まかには一致した変動を示した。その一方で、Iのデータには細かい濃度上昇がしばしば認められることから、予察分析の結果には実験室での試料汚染の影響があったことが示唆された[1]。この結果に基づいて、弘前大学での試料処理手順をさらに改善するなど、宇宙線生成核種の超高解像度分析法をグリーンランド南東ドームアイスコアに最適化した。
 その後現在に至るまで、切り分けた試料を対象に、加速器質量分析法を用いた宇宙線生成核種ベリリウム10の分析を順調に進めている。これまでに、2000年から2020年に関して分析の最終結果が得られた。ベリリウム10濃度には、毎年夏季に明瞭な季節ピークが認められ、その大きさは数年から十年スケールで変動していた。こうした変動の特徴を同期間の宇宙線観測記録や気象記録と対比することで、結果の解析と解釈を進めている。
  
成果となる論文・学会発表等 [1] 堀内一穂・八木橋理子・吉岡恒星・坂下伶菜・飯塚芳徳・的場澄人・山形武靖・松崎浩之,グリーンランド南東ドームアイスコア2本の超高解像度10Beデータ比較:前処理操作の向上と変動の再現性について.SE-Domeアイスコア研究集会,函館市大黒屋旅館,2022年11月7日-11月9日.