共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

ホスフィンと有機分子を含む星間氷の光化学反応実験
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 新潟大学
研究代表者/職名 助教
研究代表者/氏名 下西隆

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

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渡部直樹 北大低温研 教授

研究目的  リンは地球上の生物にとって不可欠な元素であるが、太陽系外の星間空間におけるリンの存在形態については未解明な部分が多く、どのような形でリンが初期の地球に届けられたかは明らかになっていない。星間ダストの表面は、分子雲における化学反応の場として重要な役割を果たすことが知られている。炭素、窒素、酸素といった主要な元素を含む有機分子の表面反応については、近年の実験研究により理解が進みつつあるものの、リンを含む有機分子の化学反応経路については、未だ多くの謎が残されている。そこで本研究は、極低温表面反応実験に基づき、リンが含まれる有機分子の新たな光化学反応経路の特定を行うことを目的とした。
  
研究内容・成果  本年度の研究では、2022年2月25日に低温科学研究所を訪問し、研究打ち合わせを行った。コロナウィルスの影響により、長期滞在による実験については来年度に見送ったものの、滞在中はリンを含む星間ダストの表面反応実験に関する詳細の検討を行った。また、今年度打ち上がったNASAの次世代大型赤外線宇宙望遠鏡JWSTによるリン系分子や大型有機分子を含む星間氷の観測研究について、実験グループとのより一層の連携を深めるべく、有意義な意見交換を行った。ここでの準備・検討内容は次年度以降の研究へと反映させていく。また、リンおよび硫黄を含む星間氷の化学脱離に関する数値シミュレーション論文にも参加した (Furuya et al. 2022, 国立天文台の古家氏および低温科学研究所の大場氏との共同研究)。当該論文では、低温科学研究所で実施されたPH3およびH2Sの化学脱離に関する実験結果(Oba et al. 2018, 2019, Nguyen et al. 2020)に基づき、これらの分子種の化学脱離効率をこれまでに無い高い精度で定量化した結果が報告されている。また、低密度星間雲、光解離領域、ホットコア領域など、星形成領域に見られる様々な環境下におけるリンの化学進化を数値シミュレーションにより調査した結果を報告した論文にも参加した (Sil et al. 2021)。
  
成果となる論文・学会発表等 K. Furuya, Y. Oba, T. Shimonishi, "Quantifying the Chemical Desorption of H2S and PH3 from Amorphous Water-ice Surfaces", The Astrophysical Journal, 926, 171 (17pp), 2022

M. Sil, S. Srivastav, B. Bhat, S. K. Mondal, P. Gorai, R. Ghosh, T. Shimonishi, S. K. Chakrabarti, B. Sivaraman, A. Pathak, N. Nakatani, K. Furuya, and A. Das, "Chemical Complexity of Phosphorous-bearing Species in Various Regions of the Interstellar Medium", The Astronomical Journal, 162, 119 (39pp), 2021