共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

山岳永久凍土の下限高度付近に発達する地下氷の観測手法の確立
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 福山市立大学
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 澤田結基

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

曽根敏雄 北大低温研

2

森章一 北大低温研

研究目的 山岳永久凍土の下限高度付近では,岩塊斜面など空隙に富む堆積物から構成される地形に永久凍土が分布する傾向にある.こうした永久凍土の成因として,礫層の空隙で生じる空気対流と地下氷の発達が重要であると考えられるが,地下氷に関する研究は極めて少ない.そこで平成30年度より共同研究の枠組のなかで,高密度(2cm間隔)に実装した温度センサーを用いた地下氷の変動観測手法の開発を試みている。本研究ではこの課題を引き継ぎ,新たな氷の観測手法の開発を行う。具体的には,高密度温度センサーに加えて超音波センサーを用い,地下氷表面の深さを検出する測器を開発し,現地で実証実験を行う。
図 地下氷観測サイトにおける地温変動と地温変化量(2019年4月-9月)  
研究内容・成果 2021年度は新型コロナウイルスの再拡大が断続的に生じたことにより,広島から低温研への出張による実験や現地での観測が極めて難しいなかでの活動となった。そのため研究は,過年度に設置した高密度温度センサーの改良と,秋に実施できた現地観測のデータ解釈を中心に進めた。2021年10月にデータ回収を行ったが,その前年度にもコロナ禍の影響で電池交換ができなかった影響で,回収できたデータは2020年4月までのデータとなった。以下に,データの概要と新たな解析結果を示す。
 観測サイトは,十勝平野の北側に位置する西ヌプカウシヌプリ(1252m)の山頂付近にある岩塊斜面である。永久凍土層が分布する斜面末端部の観測井戸に,2018年秋季に高密度温度センサーとデータロガーを設置した。センサーは2cm間隔で,地下氷の凍結融解が生じる深さ60cmから210cmをカバーし,1時間おきに温度データを記録している。
 解析では,観測値に加えて1時間あたりの温度変化量を計算し,グラフにプロットした。その結果,融雪期に生じる岩塊斜面地下への融雪水の浸透イベントと地下氷の成長を読み取ることができた。主要な解析結果(2019年4月から9月のデータ)を図に示す。図から読み取れる4月の地下氷の成長量は約10cmであった。この値は,同じ観測サイトにおける過去の観測結果(4月の融雪期における地下氷の成長量約17cm,Sawada et al., 2003)に近く,実際の成長量を概ね表している可能性が高い。以上のように,高密度温度センサーの結果からは,地下氷の成長過程を読み解くことが可能であると考えられる。
図 地下氷観測サイトにおける地温変動と地温変化量(2019年4月-9月)  
成果となる論文・学会発表等