共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
南半球陸域における凍土状況と気候の変動 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者/職名 | 主任研究員 |
研究代表者/氏名 | 斉藤和之 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
福井幸太郎 | 財団法人立山カルデラ砂防博物館 | 主任学芸員 |
2 |
森淳子 | 工学気象研究所(株) | 主任研究員 |
3 |
松元高峰 | 新潟大学 | 特任助教 |
4 |
曽根敏雄 | 北大低温研 |
研究目的 | 本共同研究は、南半球寒冷圏における陸域表層環境の現在及び過去の状況に関する解析および再現を通して、その広域気候変動との関連性や相互作用を理解・把握するを目的とする。継続的な共同研究の場を設けて研究課題を明確にし、参加研究者が各担当分野でデータの収集・整備を行い、気象学・地形学・古気候学的な知見と解析結果を総合するとともに、現在および氷期-間氷期サイクルに至る過去の状況を理解・把握する。R03年度には南極半島の地温のまとめ論文、南半球寒冷圏の凍土・地形及び気候に関する原著論文あるいは国際的研究状況に関するレビュー論文を作成、投稿する。 |
研究内容・成果 | 本共同研究は以下の6つの要素からなる。 [1] 南極半島から南米中緯度域の凍土状況(現地観測データ継続収集と整備) [2] 長期的気候の変動と凍土の分布変化(気候的再現と評価・検証) [3] 気候–地形/植生–凍土のシステム(理論的理解) [4] 対比すべき全球及び北半球の状況 [5] 中低緯度山岳氷河インベントリ(作成と特徴抽出の継続) [6] 凍土・気候関連文献インベントリ(作成継続) 我々は、国際的にも早い1990年代から南極半島を中心に永久凍土や岩石氷河の分布、凍土の鉛直温度分布、岩石氷河の流動について詳細な現地観測(最近では2019年1月中旬より6週間程度)を行い、チリでの観測も2017年12月に開始した。ただしこの2年強はCOVID-19状況のため現地観測は行えていない。 南半球は気象および地表面下の現地観測値に乏しいが、上記観測をもとにこれまで南極半島の長期温度観測結果を報告し[1]、他国の南極観測隊からも注目されてきた。2021年度には、気候変動と岩石氷河の流動との関連[1-a,b]について論文発表した。 さらに、気候モデル出力や現地観測値を用いて現在及び最終氷期における南米の凍土分布を広域かつ精細に推定する[2]一方で、限られた現地観測値を、再解析データや数値モデルと連携して広域あるいは長期に拡張する方法論を模索してきた[4]。これらは南半球に対しても非常に有効なテクニックおよび経験であり、現地調査とモデル研究との効果的連携の実証となっている。一方、地上観測と永久凍土面の温度の関連性に関するシンセシスや、気候指標を用いた凍土分布分類法の改善および評価などを通して理論的な解析や理解を深めること[3,4]も行ってきた。2021年度には、南米の山岳域の凍結/融解[2-a],および気候条件から広域凍土分布を推定する方法論の改良と適用範囲の拡張[4-a,b]について論文発表した。 また研究代表者・分担者による現地調査データ(地温、GPS等位置情報、衛星データによる地形解析など)及び国内外他機関による公開データおよび当該分野関連の論文のインベントリを作成した[5,6]。 [5]. 中低緯度岩石氷河インベントリ:分布と特徴(GoogleEarth上のインベントリ.1590ヶ所.内2021年度130件) [6]. 南半球の凍土・気候関連文献インベントリ(GoogleDrive上の共有論文.件数73件.内2021年度8件) |
成果となる論文・学会発表等 |
[1-a] 福井幸太郎、曽根敏雄、Jorge A. Strelin, 森淳子. 南極半島ジェームズ・ロス島 Lachman II 岩屑被覆氷河の表面高度変動の近年の気候変動に対する応答、地学雑誌、 130(1),27-41,2021. [1-b] F. Hrbacek, T. Sone, K. Fukui et al. Active Layer Monitoring in Antarctica: an overview of results from 2006-2015. Polar Geogr. 44(3),217-231,2021. [2-a] G. Mena, K. Yoshikawa, T. Sone et al. Freeze–thaw cycles and snow impact at arid permafrost region in Chajnantor Volcano, Atacama, northern Chile. Arctic, Antarctic, and Alpine Research,2021. [4-a] K. Saito et al.: Climatic assessment of circum-Arctic permafrost zonation over the last 122 kyr. Polar Science, in press, 2021. [4-b] T. Yokohata, G. Iwahana, T. Sone, K. Saito et al.: Projections of surface air temperature required to sustain permafrost and importance of adaptation to climate change in the Daisetsu Mountains Japan. Sci Rep,11,15518,2021. |