共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

グリーンランド氷床からの超広視野サブミリ波宇宙探査観測の実現
新規・継続の別 継続(R02年度から)
研究代表者/所属 国立天文台
研究代表者/職名 助教
研究代表者/氏名 大島泰

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

中坪俊一 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所 主任研究開発員

2

川邊良平 国立天文台 教授

3

竹腰達哉 北見工業大学 助教

4

香内晃 北大低温研

5

藤田和之 北大低温研

6

森章一 北大低温研

研究目的 ミリ波サブミリ波帯の広視野撮像観測は、運動学的スニヤエフ・ゼルドビッチ効果を用いた銀河団の運動状態の推定に重要であり、宇宙最大の天体である銀河団の動的な進化過程の解明を可能にする。我々は、直径12mのサブミリ波望遠鏡、グリーンランド望遠鏡に、多色サブミリ波カメラを設置し、銀河団サーベイを行うことを目指している。そこで、130-720 GHzの大気の窓を3色以上で同時撮像観測が可能なカメラシステムを開発し、多色サブミリ波サーベイを世界に先駆けて実現することを目的とする。2021年度は、特に極低温大型焦点面の実現に必要な、シリコンアルミ合金を用いたホーンアンテアレイの開発を目指す。
シリコンアルミ合金SA001で試作した5素子コニカルホーンアンテナアレイ(左)と開口部の顕微鏡写真(右)。 直径1.5mmと0.5mm穴に対するSA001への切削穴に対する金メッキ処理。内部まで一様に金メッキされている。 
研究内容・成果  本サブミリ波カメラシステムの心臓部である極低温検出器モジュールの設計及び試作を実施した。本カメラは、250mKまで冷却される極低温焦点面の直径が16cmと、これまで開発を行ってきたASTE用カメラと比べて2倍のもの直径に大型化する。そのため、シリコン基板でできている検出器ウェハーと、一般的にはアルミで製作されるホーンアンテナアレイ(検出器との光学的結合に用いる)やウェハー保持部との間の、熱収縮率の違いによるウェハーの破損やアライメント精度の低下が大きな課題であった。そこで、アルミに代わる材料として、シリコンアルミ合金材Japan Fine Ceramics SA001での製作を目指し、開発を推進した。
 SA001は、低い熱膨張率(アルミニウムの約 1/3)、非磁性材、超伝導性(転移温度1.2K)を示すシリコン75vol%の複合材であるが、難削材として知られている。そこで、SA001を用いたGLTカメラの低周波用ホーンアンテナアレイ(5ピクセル)を、日本ファインセラミックス社の協力を得て製作した(図1)。150GHz帯のビーム形状測定の結果、低温研で製作したアルミ製ホーンアンテナレイと同等のビーム形状が得られた。
 一方、SA001は100um程度のシリコン結晶とアルミが混在した材料であるため、加工表面では大きな散乱またはオーム損失によるロスが予想される。実際、直径1.95mm、長さ25mmのSA001導波管をベクトルネットワークアナライザーを用いてSパラメータを測定したところ、銅製導波管に対して-2 dB程度のロスが測定された。そのため、導波管表面での損失を低減するため、SA001に対して金メッキ処理技術の確立を、メッキ業者と行った。導波管に対する金メッキ処理では、導波管内部でAu厚2ミクロン、表面粗度Ra 6ミクロン程度を達成し、導波管としての仕様を満たすことを確認した(図2)。今後、金メッキしたSA001とCuの導波管でのベクトルネットワークアナライザーを用いたSパラメータの比較測定を実施し、ロスの確認を実施する予定である。
シリコンアルミ合金SA001で試作した5素子コニカルホーンアンテナアレイ(左)と開口部の顕微鏡写真(右)。 直径1.5mmと0.5mm穴に対するSA001への切削穴に対する金メッキ処理。内部まで一様に金メッキされている。 
成果となる論文・学会発表等 "Material properties of a low contraction and resistivity silicon-aluminum composite for cryogenic detectors", Tatsuya Takekoshi, Kianhong Lee, Kah Wuy Chin, Shinsuke Uno, Toyo Naganuma, Shuhei Inoue, Yuka Niwa, Kazuyuki Fujita, Akira Kouchi, Shunichi Nakatsubo, Satoru Mima, Tai Oshima, J. Low Temp. Phys., submitted.

"超伝導検出器焦点面に適した低熱収縮シリコンアルミ合金の極低温特性評価", 竹腰達哉, 李建鋒, 陳家偉, 宇野慎介, 井上修平, 長沼桐葉, 丹羽佑果, 藤田和之, 香内晃, 中坪俊一, 美馬覚, 大島泰, 日本天文学会2021年秋季年会, V121a, オンライン, 2021年9月15日 (口頭講演)

"Material properties of a low contraction and resistivity silicon-aluminum alloy for cryogenic detectors", Tatsuya Takekoshi, Kianhong Lee, Kah Wuy Chin, et al., 19th International Workshop on Low Temperature Detectors (LTD19), Online, 19-29 Jul. 2021 (ポスター講演)