共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
世界自然遺産知床山岳域における地温測定による永久凍土探査 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 北見工業大学 |
研究代表者/職名 | 准教授 |
研究代表者/氏名 | 大野浩 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
渡邊達也 | 北見工業大学 | 助教 |
2 |
中村脩矢 | 北見工業大学 | 大学院生(M1) |
3 |
曽根敏雄 | 北大低温研 |
研究目的 | 北半球で最も低緯度に形成される海氷の存在に左右される知床の自然サイクルは,気候変動の影響を特に受けやすいと考えられている.とりわけ山岳域は,その地形や環境の特性により,気候変動の影響が早いレスポンスで顕在化することが予想される. 日本国内では高標高域を中心に永久凍土が局在することが知られており,これまでに申請者らが行った知床高標高域の気温および地表面観測によって,当該地域においても永久凍土が存在する可能性が示唆されている. 本研究では,知床山岳域において永久凍土を見出し,永久凍土による環境モニタリングへと発展させることを目的とする. |
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研究内容・成果 | 知床連山山頂付近の気温および永久凍土の存在が見込まれる風衝地もしくは岩塊斜面下部における地表面温度の観測(R元年度〜)を継続して行った. 6月下旬に地表面温度観測地点の残雪状況を確認したところ,風衝地と目される全ての地点で積雪は消失しており,その一方で岩塊斜面下部においては相当量の雪が残っていた. 9月上旬に気温および地表面温度のデータを回収し,年平均気温,最暖月平均気温,気温の年較差,気温の凍結指数および融解指数,年平均地表面温度等の解析を行った.今シーズン(2020年9月〜2021年8月)は猛暑であったが,秋期の気温が低かったため,年平均気温(-0.7℃)はその前のシーズン(2019年9月〜2020年8月)の値(-0.9℃)と同程度であった.地表面温度観測の結果は,以下のように,前のシーズンと同様の傾向を示した.(1)風衝地の方が岩塊斜面下部より年平均地表面温度が低い.(2)風衝地の中でも地表面が地衣類に覆われた地点の年平均地表面温度が低い.特にサシルイ岳頂上付近の風衝地においては,年平均地表面温度が0.5℃を下回る地点が複数見られた. サシルイ岳頂上付近で最も低い地表面温度を示した地点において,9月上旬に深さ1mの掘削を行い,地温測定を開始した.10月上旬に地温データを回収したところ,一年のうちで最も多くの熱量が地中に蓄えられると考えられる9月下旬の地温は,深さ1mで約1℃であった.この値は,大雪山系の永久凍土観測地点(五色岳および白雲岳周辺)における同時期の1m深の地温に匹敵する. さらに同地点では,7月中旬と10月上旬の2度にわたって電気探査を実施した.いずれの探査断面図においても,風衝地の深さ1.5〜5mの範囲に高比抵抗領域が認められた.この高比抵抗領域は,風衝地とハイマツ帯の境界を境に水平方向への連続性がなくなることから,地表植生環境の違いが比抵抗分布に影響しているとみられる.年平均地表面温度の低い風衝地の浅層にのみ分布するという点から,高比抵抗領域は凍土層の存在を反映している可能性が高い.そして,地盤凍結が始まる直前の10月上旬の時点で凍土層として残っているということは通年で凍結状態にあることを意味し,永久凍土の存在に期待が持てる結果が得られた. |
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成果となる論文・学会発表等 | なし. |