共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

超微量有機物の化学分析拠点の構築
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 北大低温研
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 大場康弘

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

奈良岡浩 九州大学理学研究院 教授

2

高野淑識 海洋研究開発機構 センター長代理

3

力石嘉人 北大低温研 教授

4

橋口未奈子 名古屋大学 助教

研究目的 日本が主導する小惑星サンプルリターン計画「はやぶさ2プロジェクト」によって回収された小惑星リュウグウの破片が2020年12月に地球に無事帰還し,科学者だけでなく世間一般にも極めて高い注目を集めている。今後,はやぶさ2プロジェクト内で初期分析がおこなわれ,その後,サンプルの一部は一般の研究者を対象とした公募研究へと配分され,初期分析メンバー以外にもサンプル分析をおこなう機会が提供される。そこで本申請研究では,微量の小惑星リュウグウサンプルに含まれる有機物を分析することを念頭に置き,それに対応可能な微量有機物分析拠点を低温科学研究所内に構築することを目的とする。
  
研究内容・成果 研究内容
 貴重な極微量サンプルに含まれる有機物の分析に必要な極めて清浄な分析環境の構築を試みた。これにより,分析操作中の汚染の混入も最小限にする。同環境で模擬小惑星物質を用いて抽出操作をおこない,抽出物中に分析操作中の汚染の混入がないことを確認する。この操作を複数回繰り返しても汚染の混入がないことを確かめたのちに,実際の地球外物質分析へと適用させる。

研究成果
 実験室内にクラス1000のクリーンブースを導入し,その中にさらにクラス100のクリーンベンチを設置した。ベンチ内の大気を5分間計測すると,直径0.3um以下の粒子が8つ,0.3‐0.5umが1つ,それ以上大きい粒子は検出されず,極めて清浄な環境を得ることができた。
 模擬試料を用いた分析操作では,核酸塩基など本研究で対象とする有機化合物は検出されず,隕石など地球外試料分析に必要な分析環境はおおよそ整った。
 続いて,今年度導入した液体クロマトグラフ-飛行時間型質量分析計が低濃度の隕石抽出物に対応可能か評価した。代表的な炭素質隕石であるマーチソン隕石抽出した有機化合物を分析すると種々の化合物ピークが検出されたことから,当該装置による隕石有機物分析に支障がないことが確認された。

 今後は低温研内で独自に隕石有機物抽出,分析を行い,宇宙における分子進化に関する新たな知見が得られると期待される。
  
成果となる論文・学会発表等 Y. Oba, Y. Takano, Y. Furukawa, T. Koga, D. P. Glavin, J. P. Dworkin, H. Naraoka, Identifying the wide diversity of extraterrestrial purine and pyrimidine nucleobases in carbonaceous meteorites. Nature Communications, accepted (2022. 3月),謝辞あり.