共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

寒冷地における石油系炭化水素分解光合成細菌の探索
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 鶴岡工業高等専門学校
研究代表者/職名 助教
研究代表者/氏名 久保響子

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

渡邊美穂 秋田県立大学 助教

2

福井学 北大低温研 教授

3

小島久弥 北大低温研 助教

研究目的 本研究では2020年度の一般共同研究「寒冷圏部分循環湖沼におけるメタンサイクルを担う微生物の垂直分布と相互作用」に続き、現地野外調査及びサンプリングを行い、炭化水素分解光合成細菌を本調査地から分離培養を試みることを目的とした。
  
研究内容・成果  酸素非発生型の光合成細菌は、独立栄養的あるいは従属栄養的な光合成を行うことが知られている。特に紅色非硫黄細菌は従属栄養的な光合成を行うものが多い。従属栄養性の光合成細菌は、様々な有機物を分解できることが知られているが、これまで石油系炭化水素を分解できる光合成細菌はほとんど報告がない。光合成細菌は水環境中に広く分布しているが、特に部分循環湖の化学躍層付近にブルームを形成することで知られており、炭化水素の含まれる部分循環湖は格好の生息地と考えられる。
 北海道釧路市にある春採湖春採湖は最大水深約5.5 mの浅い部分循環湖であり、冬期に表層が完全に結氷する。海水が一部混入するため主に塩分濃度勾配によって成層しており、季節を通して表層と深層の水の循環が行われない。そのため深層部は完全に酸素が枯渇した嫌気状態であり、硫酸還元が進行して高濃度の硫化水素が検出されている。これまでの研究で、深層部においてメタンも豊富に検出されており、アーキアによる活発なメタン生成が予想されている。本研究では2020年度の一般共同研究「寒冷圏部分循環湖沼におけるメタンサイクルを担う微生物の垂直分布と相互作用」に続き、現地野外調査及びサンプリングを行い、炭化水素分解光合成細菌を本調査地から分離培養を試みることを目的とした。
 化学躍層は2020年には水深3-3.5 mに存在したが、2022年2月24日の調査では2-2.75 mと以前より浅い水深に形成されていた。調査日における湖心直上での氷厚は43 cmと例年並みであった。水温分布も2020年と同様だった。溶存酸素は水深1 mで過飽和になっており、表層で活発な酸素発生型の光合成が行われていたと考えられる。
 湖水中のメタン濃度は今回測定を行わなかった。湖面を覆う氷の内部に気泡が多く見られたことから、光合成で発生した酸素や湖底から上昇してきたメタンガスが捕集されている可能性がある。
 今後は得られた湖水試料を用い、好気、嫌気、光照射条件下でメタン等の炭化水素を基質とした光合成細菌の集積培養を行う。培養された微生物が光合成色素を持つかどうか紫外可視分光光度計等を用いて定期的に分析し、分離培養を試みる。
  
成果となる論文・学会発表等