共同研究報告書提出

共同研究報告書

研究区分	一般研究
研究課題	ドローン空撮と船舶を用いた河川フロントの海面・海中の同時観測
新規・継続の別	継続（H30年度から）
研究代表者／所属	九大応力研
研究代表者／職名	准教授
研究代表者／氏名	木田新一郎

研究分担者／氏名／所属／職名
	氏　　名	所　　属	職　　名
1	伊佐田智規	北大北方生物圏フィールド科学センター	准教授
2	田中潔	東大大気海洋研究所	准教授
3	吉田聡	京大学防災研究所	准教授
4	三寺史夫	北大低温研	教授
5	中村知裕	北大低温研	講師

研究目的	厚岸湖から厚岸湾にかけて空撮・水上ドローン観測と船舶観測を実施し、海水と淡水の交換・混合メカニズムの解明を目指す．厚岸沿岸域の海洋生態系は、潮汐に合わせて別寒辺牛川や厚岸湖から流出する河川水と湖水の影響を強く受けていると考えられている。しかし、別寒辺牛川の河口から厚岸湖、そして厚岸湾にかけた淡水の流出経路と水塊の変成過程はよくわかっていない．そこで浅海域でも観測可能な水上ドローンを空撮ドローンと同時に用いることで、厚岸湖内と厚岸湾の海色、流れ場、水温・塩分、クロロフィル濃度の微小空間スケールの海洋観測を実施し、河川水の流出メカニズムを明らかにする．

研究内容・成果	10月5日-6日の間、(1)厚岸大橋付近から別寒辺牛川の河口付近まで、そして(2)厚岸湾の湾奥と湾内の横断観測、を実施した。本観測を行った時間帯は上げ潮の時間帯に相当する。 (1) 厚岸大橋から別寒辺牛川河口にかけて河川水の流出経路と水塊構造の変化を捉えるため、ウミアイサから採水とCTD観測、水上ドローンによるCT計・クロロフィル計・ADCPを用いた曳航観測、そして上空からマルチスペクトルカメラを搭載したドローンによる空撮観測を実施した。水上ドローンからのCT計・クロロフィル計による曳航観測は、厚岸大橋付近では水深30，60，90，120cmと計4点で測定したが、厚岸湖内では水深が浅くなるため30cm深のみで測定した。厚岸大橋付近で50cm/s超の流れがあること、そして亜表層に強い流れが生じていることが明らかになった。亜表層には高塩分の水塊が存在することから、上げ潮時は厚岸湾から厚岸湖への海水流入が起きていることがわかる。河口付近では陸域に向かう30cm/s近い流れが観測され、水深が深いほど早い。また幾重にもフロントがあることが視覚的に確認できたことから、上空からの空撮と水上ドローンによる水塊観測を実施した。空撮画像で捉えられる海色の変化は、水塊の変質を捉えていることが確認でき、今後、画像を用いたクロロフィル濃度の空間分布の推定に活用できることが示唆された。河口くらいの空間スケールでは、空撮ドローン、水上ドローン、そして船舶観測の組み合わせは水平分布と鉛直構造を取得するための高密度観測手法として有効であることがわかった。 (2) 厚岸湾の横断観測厚岸湾と厚岸湖の交換過程を捉えるため、ADCPとCTDを用いて湾奥から厚岸湖にかけた測線に沿ってエトピリカから観測を10月5日に実施した。また厚岸湾内での循環場を明らかにするため、湾を横断するようにADCPとCTDを用いて湾内観測を実施した。ADCP観測からは海水が水深の深いところを辿りながら厚岸湖へと流入していることが明らかになった。厚岸大橋付近では50cm/s超、そして湾内では一番深い中央付近で10cm/s程度の湾奥へ向かう流速が確認できた。一方、湾の岸近くでは湾口へと向かう数cm/s程度の流れが生じていた。このような循環場は2018年の秋の上げ潮時にも観測されていることから、典型的な上げ潮時の流れ場だと推測される。CTD観測からは界面付近に数メートル程度の低塩分水が存在することが明らかになった。採水観測では低塩分ほど栄養塩が高く、クロロフィル濃度も高いことから海面付近では活発な植物プランクトンの増殖が起きていた可能性が高い。また数百メートルしか離れていないような測点でも塩分やクロロフィル濃度が大きく変わっていることから、河川水のフロント、または渦が測線付近に存在していたと思われる。

成果となる論文・学会発表等	高見健太朗　「ドローンとラジコンボートによる河川フロントの観測」，九州大学総合理工学府大気海洋環境システム学，修士論文， 2022 高見健太朗、木田新一郎、磯辺篤彦「ドローン搭載赤外線・可視カメラによる河川フロントの観測」、JpGU (Japan Geoscience Union) 2021　オンライン高見健太朗、木田新一郎、磯辺篤彦、田中潔「ドローンとラジコンボートを用いた河川フロントの観測」、海洋学会2021オンライン木田新一郎、阿部稜、山敷庸亮　「沿岸域における河川水の行く末」、JpGU (Japan Geoscience Union) 2021　オンライン