共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

 「千葉セクション」から始める房総半島のバイオマーカー古環境研究
新規・継続の別 新規
研究代表者／所属 国立極地研究所
研究代表者／職名 JSPS特別研究員-PD
研究代表者／氏名 梶田展人

研究分担者／氏名／所属／職名
　
氏　　名
所　　属
職　　名

1

 菅沼悠介 国立極地研究所 准教授

2

 山本正伸 北海道大学環境科学院 教授

3

 関宰 北大低温研

研究目的 上総層群のうち、MIS 33-18に相当する国本層、梅賀瀬層、⼤⽥代層の岩⽯を連続的に採取し、バイオマーカーの分析を⾏う。アルケノンの組成と炭素安定同位体⽐からは、それぞれ表層海⽔温と⼤気中⼆酸化炭素濃度を定量的に復元することができる。⻑鎖ノルマルアルカンの組成や、炭素・⽔素安定同位体⽐からは、陸上の植⽣や気温や湿度変動に関する情報を得ることができる。多種のバイオマーカーから復元される古環境情報を気候モデルに組み込むことにより、中期更新世気候遷移の原因解明に向けた成果を挙げる。
　　
研究内容・成果 2022年度では、国本層千葉セクションの試料に含まれるバイオマーカーを分析し、MIS18―20の期間における気候変動を復元することを試みた。ノルマルアルカンおよびアルケノンの保存状態は、当初の想定どおり良好であった。北海道大学低温科学研究所のガスクロマトグラフ安定同位体比質量分析計を用いることで、炭素数23-35のノルマルアルカンの炭素酸素安定同位体比を分析することができた。ノルマルアルカンの炭素同位体比は、炭素数によって異なるパターンを示しており、陸域の温度、降水量、植生など幅広い情報を反映していると考察できた。ノルマルアルカンの平均炭素長と炭素安定同位体比には、共通して数千年スケールの激しい変動が記録されており、それらは出版済みの有孔虫の酸素同位体比の変動とも同期していた。つまり、陸―海の変動が相互にリンクしていたことが示唆された。一方で、水素同位体比は、どの炭素長のデータも似たような変動を示しており、それは有孔虫酸素同位体比の変動や氷期間氷期サイクルと一致していなかった。一方で、松山―ブルンの地磁気逆転境界において、特徴的なスパイク状の変化を示しており、地磁気の逆転が気候変動に何等かの影響を及ぼしたのかもしれない。アルケノンの温度変化は、約22℃〜26℃に間で変化しており、有孔虫酸素同位体比にも示された氷期間氷期サイクルと同期していた。一方で、時代によって有孔虫が示す温度変化幅とアルケノンが示す温度変化幅は異なっており、これは海水温の季節変動の変化を示しているかもしれない
上記の成果は、2022年度中に出版することは叶わなかったが、2023年度内には論文を出せるように努力する。また、千葉セクションの分析からは上総層群のバイオマーカーが古気候古環境学的に非常に重要であることが示されたので、当初計画にあったように、他の時代の層準（梅ヶ瀬層・大田代層）の分析も開始する予定である。

上記の成果は、2022年度中に論文として出版することは叶わなかったが、2023年度内には出版できるように努力する。また、千葉セクションの分析から、上総層群のバイオマーカーが古気候古環境学的に非常に重要であることが示されたので、当初計画にあったように他の時代の層準の分析も開始する予定である。
　　
成果となる論文・学会発表等 梶田展人「千葉セクションにおけるバイオマーカー古環境研究」2022年3月18日・第3回　札幌・北陸・島根合同古環境勉強会