共同研究報告書


研究区分 研究集会

研究課題

樹木の生態に対するシンクベースの生理的機序からの探求 II
新規・継続の別 継続(H31年度から)
研究代表者/所属 京都府立大
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 隅田明洋

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

船田良 東京農工大院農学研究院 教授

2

安江恒 信州大先鋭領域融合 准教授

3

石原誠 森林総合研究所北海道支所 チーム長

4

韓慶民 森林総合研究所 室長

5

栗田悠子 龍谷大学農学部 学振特別研究員(PD)

6

梅木清 千葉大院園芸学研究科 准教授

7

長田典之 名城大農学部 准教授

8

石井弘明 神戸大院農学研究科 准教授

9

檀浦正子 京都大院農学研究科 助教

10

種子田春彦 東京大院理学系研究科 准教授

11

和田尚之 北海道立総合研究機構林業試験場 研究職員

12

平野恭弘 名古屋大院環境学研究科 准教授

13

斎藤秀之 北大院農学研究院 講師

14

小野清美 北大低温研 助教

15

滝沢侑子 北大低温研 助教

16

赤田辰治 弘前大農学生命科学部 准教授

研究集会開催期間 令和 2 年 9 月 9 日 〜 令和 2 年 9 月 9 日
研究目的 環境変動に対する課題解決に関連し、北方林樹木に対しても多くの生理・生態学研究が行われてきた。その研究の流れの中で『樹木個体内の各器官に配分される光合成産物や栄養分の割合は、配分先であるシンク器官の活性の差によって決まり、その結果として樹木の成長が起こる』という新たな視点が広がっている。この『シンクベース』の生理的機序に基づいて樹木の生態現象を解明する研究を進めるにあたり、ラボでの作業をメインとする研究者や野外をメインとする研究者など国内で活躍する異分野の研究者間で研究成果の情報を共有し、今後の連携を図ることが本研究集会の目的である。本年度は新たに木材科学や養分転流などの研究者に発表を依頼した。
  
研究内容・成果 本年度はCOVID-19感染拡大の影響のため、オンラインのみで1日で開催することとなった。2020年9月9日(水)9:30〜18:20に全講演者10名がZoomを利用したリモートで講演を行った。低温研共同研究者小野清美博士・滝沢侑子博士がZoomのホストを担当し、斎藤秀之博士(北大院)と隅田(責任者:京都府大院)がZoom上で司会を務めた。また、一般の聴講希望者にZoomによる集会内容を公開した。
 まず隅田が趣旨説明の発表の中で、野外で観察される生態学的現象が起こるメカニズムは正しく理解されているかどうかについて、最近の研究動向について解説するとともに問題提起を行った。次に、船田良教授(東京農工大院)が樹木の最大のシンク器官である幹について、形成層構造とその活動、木部細胞の分化機構や、環境要因含むそれらの制御機構について詳しい発表を行った。石原誠博士(森林総研)はサクラこぶ病を引き起こす菌が異常な樹木の細胞増殖を引き起こす機構などについて発表した。安江恒博士ら(信州大)は炭素同位体を用いた手法による幹の肥大成長に使われる光合成産物の由来に関する研究について発表した。檀浦正子博士(京大院)は炭素同位体ラベリングを用いた樹木の師部における光合成産物の輸送経路の解明に関する研究について発表した。栗田悠子博士(龍谷大)はポプラ樹体内におけるリンの転流および貯蔵経路に関する分子生物学的な研究の手法と成果について発表した。平野恭弘博士(名古屋大院)は樹木の地下部の細根の分岐構造および動態に関する測定法や解析法と研究成果について発表した。種子田春彦博士(東京大院)は亜高山帯の常緑樹針葉樹の枝の水分ストレスや炭素収支に対する冬季の乾燥等の影響に関して発表を行った。和田尚之氏(北海道立林試)は北海道のカラマツ林における害虫による集団枯損と樹体内の器官への資源配分との関連についての発表を行った。最後に、長田典之博士(名城大農)は常緑広葉樹および落葉広葉樹の展葉パターンについて、葉の形質、窒素養分や木部通導器官に関連付けた発表を行った。これらの発表のあと、全体にわたる質問を含む総合討論を行った。
 各発表においては十分な質問の時間を設けたため、リモートで聴講した一般の聴講者から非常に多くの質問があり、集会全体にわたり活発な討議が行われた。集会終了後は全講演者および聴講者に対してウェッブでアンケートを行った結果60名からの回答が得られた(参加アカウント数は58)。滝沢侑子博士がその結果を取りまとめ、アンケート回答者に結果を報告した。聴講者の42%が学生またはポスドクだった。また、少なくとも3大学の35名の教員・学生が1つのアカウントによる画像を大画面に映して聴講したことも判明した。ほとんどのアンケート回答者が集会を高く評価しており、次年度も本集会を開催すべきとの評価をいただいた。
  
研究集会参加人数 93 人