共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

民生用重量計を利用した積雪重量自動計測システムの精度向上に関する検討
新規・継続の別 継続(H28年度から)
研究代表者/所属 東京都立産業技術高等専門学校
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 高崎和之

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

若林良二 東京都立産業技術高等専門学校 教授

2

真志取秀人 東京都立産業技術高等専門学校 准教授

3

吉田嵩 東京都立産業技術高等専門学校 助教

4

的場澄人 北大低温研

5

三寺史夫 北大低温研

6

高塚徹 北大低温研

研究目的  応募者らはこれまで民生用体重計を利用して積雪重量を自動計測するシステムを構築し、長期間の無人自動観測と遠隔監視に成功している。積雪重量が増加する期間では概ね良好な成果を得られているものの、積雪重量が減少に転じると観測結果に大きな日変動が現れる。この現象は毎年見られ、全てのセンサーにほぼ同時に始まり、連続的に重量が変化していることから、センサーの異常ではなく計量部に加わる荷重が雪の粘性などにより変化しているものと応募者らは考えている。本研究は可搬性・設置性に優れた安価な積雪重量計の開発を最終的な目的として、令和2年度は機械的・ソフト的な工夫によりこの問題を解決することを目標に実験を実施する
図1 積雪重量の測定結果 図2 積雪密度の測定結果(計量面積を1500cm^2として計算) 
研究内容・成果  筆者らは、民生用として市販されている体重計を利用した積雪重量遠隔自動計測システムの開発を目標に評価と改良を繰り返してきた。その結果、B5判程度の面積の民生用体重計を用いた積雪重量自動計測システムを構築し、動物による物理的破損や停電による一時停止を除き3か月程度の連続観察に連続して成功している。一方で、計量部(以下、センサと呼ぶ)の面積を小さくしたことで雪同士の結合を無視することができないことも昨年度までの研究により明らかとなった。そこで、本年度はセンサの周囲を防鳥ネットで囲い、センサ上部と周囲の雪同士の結合を機械的に断つ方法を提案・評価した。
 2021年1月15日から3月8日までの積雪重量と積雪密度の観測結果をそれぞれ図1、図2に示す(1月15日15時〜1月18日9時までは停電のため欠測)。積雪深は気象庁公表のアメダス(札幌)の観測値を用いている。図1より、いずれの計測値も、積雪深の増加に伴い重量が増加していることが確認できる。このことから、前年度までと同様に積雪重量の自動計測が正しく行われていたことが確認できる。防鳥ネットにより機械的に雪同士の結合を断つ手法の有効性ついては、3月8日までの観測結果に顕著な重量変動が見られないことから現時点で判断することは難しい。しかし、一時的に気温が上昇して雪解けが進んだとみられる2月13日から15日にかけて、センサ#2に見られる変動がセンサ#3には見られないことや、積雪密度が文献値とよく一致していることなどから提案手法が有効である可能性が高いと考えている。観測は現在も継続中であり、今後雪解けが進むことでより有意なデータを取得することができると考えている。
 今年度の共同研究では、新型コロナウィルスの影響により、産技高専メンバーが出張して装置の設置を補助することができなかったが、従来のような大型のオイルバッグを必要としない本手法は、携帯性、可搬性に優れ作業者が1名であっても十分に設置可能であることが確認できた。また、不本意な形ではあるが、データの蓄積が重要な自然科学分野における遠隔自動観測の必要性を改めて認識する良い機会となった。
図1 積雪重量の測定結果 図2 積雪密度の測定結果(計量面積を1500cm^2として計算) 
成果となる論文・学会発表等