共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

重い同位体に富む地球外有機物の高精度窒素安定同位体比測定法の開発
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所
研究代表者/職名 特任助教
研究代表者/氏名 菅原春菜

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

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力石嘉人 北大低温研

研究目的  窒素には14Nと15Nの2つの安定同位体があり, その比は地球大気の15N/14N 比に対する千分率(δ15N, ‰)として定義される.δ15N値の測定法では、窒素化合物を窒素ガス(N2)に変換し,その質量(m/z)の量比を測定するが,N2の可能な同位体の組み合わせのうち,15N15Nの生成は無視できるほど小さいと仮定し,14N14N,15N14Nの2種類のみを測定する.しかし、 15Nに富む地球外物質にこの仮定を本当に適用してよいのか,実は検証されていない.そこで本研究では,高いδ15N値を持つ試料を人工的に作成し,この仮定の検証を行う.
  
研究内容・成果  始原的太陽系物質は地球物質と比べて15Nに富み,+1000‰以上の非常に高いδ15N値を示し,さらには15Nが局所的に濃集したホットスポット(<+5000‰)も存在する(e.g., Briani et al., 2009, PNAS).このような非常に高いδ15N値を持つ物質について,15N15Nの生成を無視した従来の測定法では,本当にその測定値は真の値から乖離が生じていないのか否かを検証するため,本研究では,15Nでラベル化した試薬を用いて検証実験を行う.モデル物質として,炭素質コンドライトにも存在し,重要な生体分子であるアミノ酸(グリシン,アラニン)を選び,15Nでラベル化したアミノ酸試薬と通常のアミノ酸試薬とを混合することでδ15N値を0‰から1000‰まで変化させた試料を作成する.これらの試料の真のδ15N値は混合比(wt.)により決定できる。これらのアミノ酸試料について、必要な誘導体化を行なったのちにガスクロマトグラフ-同位体比質量分析計(GC-IRMS)にてδ15N値の測定を行い,真のδ15N値との比較を行う.
 本年度は低温科学研究所に現有のGC-IRMSを用いて測定を行う計画であったが、コロナ禍による社会状況のため、低温科学研究所まで出張することが叶わず実験を進めることができなかったため、オンラインにて前年度に取得した予察データについて議論を深めるとともに、宇宙における安定窒素同位体比の多様性について論文にまとめた。
  
成果となる論文・学会発表等 - 菅原 春菜, 宇宙における安定窒素同位体比の多様性とその起源解明に向けた実験的アプローチ, 低温科学 79 (2021) (in press)
- Haruna Sugahara, Yoshinori Takano, and Yoshito Chikaraishi, Examination of analytical accuracy of GC/IRMS: Nitrogen isotopic composition of 15N-enriched amino acids, JPGU 2020, オンライン