共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

リンを含む星間ダストの赤外分光および表面反応実験
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 新潟大学
研究代表者/職名 助教
研究代表者/氏名 下西隆

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

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渡部直樹 北大低温研

研究目的 リンは、生体細胞中に普遍的に存在しており、地球上の生物にとって不可欠な元素である。しかし、星間空間におけるリンを含む物質の存在形態については未だ謎が多い。本研究は、リンを含む星間ダスト表面における物質の化学進化過程を実験的に明らかにすることを目的としている。特に、分子雲内で重要であると考えられる、紫外線などを介した非熱的プロセスに着目し、リン含有鉱物―星間氷の境界面におけるリン系分子の生成について研究を行う。
  
研究内容・成果  本年度の共同研究では、まず低温科学研究所で実施されたリンを含む星間氷 (ホスフィン, PH3)の化学脱離に関する実験論文 [Nguyen et al. 2020]に参加した。当該論文においては、実験で明らかになった分子雲中におけるホスフィンの化学脱離現象に対し、星間空間のリン系分子に関する既存の観測・理論研究との比較を行い、宇宙化学的議論の充実化に貢献した。また、ここで得られた実験結果を星形成領域の星間化学シミュレーションに応用した研究を海外の共同研究者らと行っており、投稿論文は現在審査中である (Sil et al. in prep.)。
 次に、2021年2月16日から17日にかけて低温研に短期滞在を行った。コロナウィルスの影響により、長期滞在による実験については来年度に見送ったものの、滞在中はリンを含む星間ダストの赤外分光および表面反応実験に関する準備および有意義な議論を行った。本研究課題の実験では、シュライバーサイトに近い組成を持つリン化鉄試料のレーザーアブレーションを行う。滞在中は、実際に使用する装置やホスフィンガスの準備手順について確認を行い、具体的な実験手順についての検討を行った。さらに、用いるリン化鉄試料については、北海道大学 理学研究院の共同研究者(篠崎彩子 助教)の協力のもと、試料の準備およびアブレーション装置で使用するための加工作業を滞在中に行った。ここでの準備・検討内容は次年度以降の研究へ反映させていく。
  
成果となる論文・学会発表等 T. Nguyen, Y. Oba*, T. Shimonishi, A. Kouchi, N. Watanabe, "An Experimental Study of Chemical Desorption for Phosphine in Interstellar Ice", The Astrophysical Journal Letters, 898, L52 (6pp), 2020