共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

寒冷域アマモ根圏における窒素硫黄循環系マイクロバイオーム解析
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 日本大学
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 中川達功

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

高橋令二 日本大学 教授

2

土屋雄揮 日本大学 助教

3

福井学 北大低温研 教授

研究目的 アマモ群落の持続可能な保全のためには、アマモの栄養源となる根の周辺環境である根圏の微生物群集(マイクロバイオーム)の働きと栄養(窒素、リン)の可溶化が不可欠である。近年、アマモ根圏に生息する硫黄酸化菌が硫酸還元菌により生産された猛毒の硫化水素を酸化する際にアマモ根圏のpH低下やリン酸の可溶化が確認され、アンモニアの可溶化も示唆された。しかし、アマモ根圏の窒素硫黄循環系マイクロバイオームの分布は未知である。そこで、本研究ではレーザーマイクロダイセクションシステム法を使用して窒素硫黄循環系に関わるアマモ根圏マイクロバイオームの微視的空間分布を明らかにすることを目的とする。
  
研究内容・成果  新型コロナウイルス感染症拡大に対する緊急事態宣言の解除後、神奈川県において7月に再度新型コロナウイルス感染症が拡大したため、研究を中断せざるを得なかった。さらに、コロナ禍における遠隔授業の準備と実施に多くの労働時間を充てる必要があり、当初の計画の実験を実施する事が不可能であった。その代替実験として、硫黄酸化系N₂O還元菌(Dechloromonas-Magnetospirillum-Thiocapsa:DMT)およびBacteroidetes (Flavobacteria)に特異的な新しいプライマーの設計を行い、プライマーのアニーリング温度を調べた。次世代シーケンサーによるショットガンメタゲノム解析よりアマモ群落から得られたnosZ遺伝子断片からプライマーを設計した。設計したプライマーの特異性を調べるため、門・綱レベルで代表的なnosZ遺伝子保有菌株14種のDNA抽出を行った。新しく設計したプライマーを用いてPCRを行い、プライマーの特異性や適切なアニーリング温度を調べた。リアルタイムPCRの検量線作成時のスタンダードとしてDMT系の硫黄酸化菌用nosZプラスミドスタンダードとBacteroidetes のnosZプラスミドスタンダードを作製した。DMT系の硫黄酸化菌用nosZプラスミドスタンダードとBacteroidetes のnosZプラスミドスタンダードを用いて、リアルタイムPCRによる検量線の作成を試みた。DMT系の硫黄酸化菌用プライマーはアニーリング温度が59 ℃において、標的であるミスマッチ数が0のDMT系のSedimenticola thiotaurini を特異的に検出できた。しかし、ミスマッチ数が1のNitratifractor salsuginisの増幅も確認された。一方、アニーリング温度58 ℃では目的鎖長の上部にもバンドが確認されたり、60 ℃では目的鎖長のバンドが薄くなった。従って、今回設計したプライマーの適切なアニーリング温度は59 ℃が有効であると判断した。さらにPCRクローニング解析から、新しく設計したnosZ-II-DMT-F及びnosZ-II-DMT-F のプライマーがDMT系の硫黄酸化菌のnosZ遺伝子を標的としたPCRプライマーとして有効であることが示された。スタンダードプラスミド作成では、R2=0.999で直線性の高い検量線の作成に成功した。しかし、増幅効率は78.4 %で80 %以下であったため、検量線用プラスミドに使用する濃度の幅を調整する必要が考えられた。一方、Bacteroidetes用プライマーはアニーリング温度の検討が終わり、リアルタイムPCRにおける実証実験に進んだが、新型コロナウイルス感染症拡大のため、現在、実験は保留中である。
  
成果となる論文・学会発表等