共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
地球の水の起源に関する新しい説:星間有機物の加熱による水生成 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 北大低温研 |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 香内晃 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
中野英之 | 横浜桐蔭大学スポーツ健康政策学部 | 教授 |
2 |
大場康弘 | 北大低温研 | 准教授 |
研究目的 | これまでの惑星形成論では地球の水の起源も含めて,惑星系の材料物質を鉱物と氷と考えてきた.ハレー彗星の固体微粒子や惑星間塵などの分析から,これらの微粒子は鉱物,有機物,氷からできていることが明らかになっている.従って,惑星系の材料物質を考える場合,鉱物と氷だけでなく,有機物を考えることが必須である. 本研究では(氷を含まない)普通隕石母天体に取り込まれた星間有機物が加熱によってどのように変化するかを実験的に明らかにしようとするものである. |
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研究内容・成果 | 彗星の有機物は惑星間塵として手に入れることができるが,極微量のため実験に使うことはできない.彗星の有機物は星間分子雲で氷(H2O, CO, NH3などからなる)に紫外線が照射されてできた.そこで,このような氷に紫外線を照射して実験室で生成された有機物の化学分析結果をもとに,試薬を調合して出発物質(模擬彗星有機物)を作った.それをダイヤモンドアンビルセルで加熱し,顕微鏡で加熱過程を観察した.また,反応容器で加熱する実験もおこない,回収した生成物を各種化学分析法で分析した. ダイヤモンドアンビルセルを用いた加熱実験では,100℃では一様な有機物だが,200℃では2相の有機物に分離した.350℃で水の生成がはっきりし,有機物は赤茶色のものだけになった.400℃では有機物が黒くなり石油のようになった. 反応容器を用いた実験では,黒い部分は石油様と,半透明有機物が少し溶けた水を回収し,各種化学分析をおこなった.その結果,石油は地球上で産出するものによく似ていること,水溶液は確かに水を主成分とすることがわかりった. 2つの実験から,模擬彗星有機物を加熱すると,水と石油が生成されることが確認できた.出発物質の組成を大きく変えても,水と石油ができるという結論は変わらなかった.以上の結果から,彗星の有機物は内惑星領域の水のソースになり得ることが明らかになった.これまで考えられてきたような炭素質隕石がなくても地球の水の起源を説明できる可能性がでてきた.また,小惑星や氷衛星の内部には大量の石油が存在していることが示唆された. |
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成果となる論文・学会発表等 |
Nakano, H. et al. (2020) Precometary organic matter: A hidden reservoir of water inside the snow line, Scientific Reports, 10, 7755. 2020.5.8 |