共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

寒冷湿地泥炭土壌中の温室効果ガス発生と関連微生物活性
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 千葉大園芸学研究科
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 犬伏 和之

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

中山絹子 千葉大園芸 院生

2

佐藤まきば 千葉大園芸 院生

3

福井 学 北大低温研

研究目的 寒冷湿地には泥炭土壌が広く分布し、陸上で最大の炭素貯留庫と推定されている。しかし近年の地球環境変動の影響を受けて、土壌炭素の分解が促進され、メタンなど温室効果ガスが大量に発生すると懸念されている。本研究では寒冷湿地泥炭土壌中の温室効果ガス発生量を規定する因子のうち、特に温室効果ガス関連微生物としてメタン生成古細菌とアンモニア酸化細菌に注目し、それら微生物群の泥炭土壌中での活性を定量し、その活性に対する温度や酸素などの影響を解明し、さらに関連微生物群集構造を解析することを目的とする。
  
研究内容・成果 寒冷地泥炭土壌表層部と次表層部を培養瓶に採取・密栓し、気相を窒素に置換した嫌気条件で培養中のメタンおよび二酸化炭素生成量を定量した。培養温度は現地の平均地温から+20℃の範囲に設定し、地球環境変動の影響で頻発化する洪水とニホンジカの攪乱の2つの環境変化が泥炭土壌中のメタン生成にどのように関わるのか検討することを加味して行った。COVID-19による緊急事態宣言の影響を受け、実験が遅れているが、これまでの研究結果から、シカ攪乱により土壌のメタン生成活性が低下する傾向がみられた。これは、前年度現地で採取したガスから算出したメタンフラックスと同じ傾向を示した。シカ攪乱による土壌有機物の分解促進の影響で、土壌中の易分解性炭素が減少し、メタン生成が抑制されたか、メタン酸化が生じた可能性が考えられる。非洪水区ではシカ攪乱によるメタン生成活性の低下が顕著にみられた。また、シカ攪乱によって泥炭土壌の有機態窒素の無機化(アンモニア化成)や硝酸化成反応が促進されている傾向も認められた。本年度測定した培養前の泥炭土壌の理化学性の結果から、メタン生成活性と全炭素量の間には正の相関関係(R=0.64 , p<0.05)、メタン生成活性と灰分含量の間には負の相関関係(R=-0.41 , p<0.05)がみられた。二酸化炭素生成活性は地下水位との間に負の相関関係(R=-0.29 , p<0.05)、培養温度との間には弱い正の相関関係(R=0.18 , p<0.2)が見いだされた。非洪水区ではシカ攪乱により土壌中の灰分含量が10倍以上増加したことから、洪水区より土壌の分解が進んでいることが考えられる。
次年度は温度や酸素条件を変化させて培養試験を行い、さらにメタンおよび⼀酸化⼆窒素ガス生成や酸化に関わる要因についての検討を行う予定である。また、メタン酸化活性の違いや、メタンに関わる細菌・古細菌菌叢などに着目し、解析を進めていく予定である。
  
成果となる論文・学会発表等 K. Nakayama, K. Inubushi, M. Yashima, H. Shigeta and M. Sakamoto, Effects of environmental changes on peat soil and its microbial properties in wetland, 2nd International Symposium on C and N Dynamics by Land Use and Management Changes in East and Southeast Asian Countries, Yamagata University, Tsuruoka, Japan, September 28- October 2, 2020

現地でのメタン放出量と窒素代謝活性の関係を解析し、その成果の⼀部は上記の国際学会で発表し、関連の国際学術誌に投稿準備中である。