共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

隕石に含まれる糖およびその関連物質の炭素同位体比および光学異性体比の解明
新規・継続の別 継続(H30年度から)
研究代表者/所属 東北大学大学院理学研究科
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 古川善博

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

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力石嘉人 北大低温研

研究目的 隕石に含まれるアミノ酸にはL体がやや多いという鏡像異性体の偏りがある。このことは、隕石と生命の起源の関わりとして議論されてきた。近年、本研究グループでは隕石から糖分子を見つけたが、その分子に鏡像異性体の偏りがあるかどうかは不明である。本研究は、これを明らかにするために、ガスクロマトグラフィー分析の技術開発を行う。また、隕石有機物の起源と糖を生成する反応は大きな関わりがある可能性があり、糖合成反応に伴って起こる炭素同位体分別を明らかにする。
  
研究内容・成果 糖の鏡像異性体をガスクロマトグラフィーで分離する手法は確立されていない。そのため、様々なカラムや誘導体化方法を試みて、目的分子を分離できるかどうかを検証した。その結果、鏡像異性体分子を構造異性体分子に変換するタイプの誘導体化方法で、目的成分であるリボースの分離に成功した。しかし、この方法では、隕石のように共雑成分が多い試料では、うまくいかない場合があるので、キラルカラムによる分離を継続して試みている。
隕石有機物の起源に関する研究では、ホルモース型反応の模擬実験を行い、そこで生成するアミノ酸の炭素同位体組成の分析を低温研で、不溶性有機物の炭素同位体組成の分析を東北大で行なった。その結果、生成したアミノ酸は13Cに富み、不溶性有機物は12Cに富む特徴があることが明らかになった。この特徴と、その同位体組成の差が隕石有機物にみられる炭素同位体組成の特徴に類似することから、糖を作る反応として知られるホルモース型反応による動的同位体分別が、隕石有機物に記録され長年の謎となっていた炭素同位体組成の大きな違いを生む原因となり得ることが明らかになった。研究成果はScience Advancesに出版される。
  
成果となる論文・学会発表等 Y. Furukawa,Y. Iwasa,and Y. Chikaraishi, Synthesis of 13C-enriched amino acids with 13C-depleted insoluble organic matter in a formose-type reaction in the early solar system. Science Advances, in Press.
古川善博、炭素安定同位体組成で探る隕石有機物の生成反応と地球への運搬. 低温科学 in Press.