共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
海洋システムの統合的理解に向けた新時代の力学理論の構築 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 海洋研究開発機構 |
研究代表者/職名 | 主任研究員 |
研究代表者/氏名 | 古惠亮 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
木田新一郎 | 九州大学応用力学研究所 | 准教授 |
2 |
浮田甚郎 | 新潟大学自然科学系 | 教授 |
3 |
田口文明 | 富山大学地球システム科学科 | 教授 |
4 |
勝又勝郎 | JAMSTEC地球環境観測研究開発センター | 主任研究員 |
5 |
相木秀則 | 名古屋大学宇宙地球環境研究所 | 准教授 |
6 |
吉川裕 | 京都大学理学部 | 准教授 |
7 |
長井健容 | 東京海洋大学術研究院海洋環境学 | 助教 |
8 |
松村義正 | 東京大学大気海洋研究所 | 助教 |
9 |
増永英治 | 茨城大学広域水圏環境科学教育研究センター | 助教 |
10 |
三寺史夫 | 北大低温研 |
研究目的 | 海洋力学は、伝統的には地球流体力学の一分野として、海洋循環の形成やその変動を引き起こす波動現象などの研究において中⼼的な役割を果たしてきたが、現代の海洋物理学では、流体以外の系や海洋以外の系との相互作用など、従来の理論的枠組みでは扱うことの困難な複雑な機構の解明が重要課題となっている。そこで本研究課題では、多様な興味関⼼を持つ専⾨家が⼀堂に会し、各々が持ち寄った枠組みや解析⼿法を集めて体系化することで、「新時代の海洋⼒学」とも呼ぶべき学問領域を構築するための⼟台とする。 |
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研究内容・成果 | 申請当初は低温研で対面の研究集会を催す予定であったが、コロナ禍のため中止し、代わりにオンラインで、少人数による議論を二回行った。また、3/29に、十人程度によるオンライン集会を催す予定である。 1) 12月2日: 古恵・三寺・Yuan(低温研の大学院生)で、大陸棚/大陸斜面地形における鉛直循環に関する議論をした。ターゲットとする海域はサハリン島の北方で、アムール川からの淡水供給により、陸棚上に強い成層が形成されていることが特徴である。この海域にはアムール川から供給される高濃度の鉄が一度生物に取り込まれた後に死骸となり、海底に沈積していると考えられる。鉄は生物生産にとって非常に重要な物質であり、海底から海中への鉄の再供給過程は北太平洋の広範にわたる生物生産にとって重要である。すなわち、大陸棚上での鉛直循環プロセスは、鉄供給において重要な役割を担う。 シミュレーションによると、冬季モンスーンによる北西季節風のため、岸付近では下降流になる。一方、陸棚端では強い上昇流が起き、大陸棚上に活発な鉛直循環が生じることがわかった。これは、淡水により成層化することによって上層、下層間の流れが分離したことが重要と考えられる。ディスカッションでは鉛直循環形成の力学や数値モデル解析の手法などについて詳細な議論がなされた。 2) 12月22日: 古恵・三寺・Hung We(低温研の大学院生)で、周氏が実施している北太平洋とオホーツク海の間の海水交換過程について、議論した。両海洋間の海水交換は、東カムチャツカ海流(EKC)が主にブッソル海峡とクルーゼンシュテルン海峡という2つの深い海峡で出入りすることによりなされる。そのためには(EKC)がこれらの海峡の中間で分岐し、EKCの一部がクルーゼンシュテルン海峡から侵入する必要がある。しかしながら、最新の高解像度モデルでは慣性の効果が強く表れ東カムチャツカ海流が両海峡をオーバーシュートしてしまい(すなわち、分岐せず)、結果的に海水交換が再現できないという問題が顕わとなった。周氏は、この問題がモデルに潮汐が入っていないために生じることを明らかにした。ディスカッションでは、潮汐が海水交換を促すメカニズムや、この効果のパラメタリゼーションについて、突っ込んだ議論がなされた。 3) 3/29日: 本申請に含まれる研究者を中心に10名程度が参加するオンライン集会を企画している。通常のセミナー的発表の形式を取らず、未完成な研究途上の結果を参加者に順に紹介してもらい、話題それぞれについて全員で自由に議論する形をとることで、新たな研究の方向が浮かび上がってくることを目指す。 |
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成果となる論文・学会発表等 |