共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

固有透過度と微細構造による積雪の間隙特性に関する研究
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 防災科学技術研究所
研究代表者/職名 主幹研究員
研究代表者/氏名 荒川逸人

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

安達聖 防災科学技術研究所 特別研究員

2

的場澄人 北大低温研

研究目的 固有透過度は密度と平均粒径に関連づけられ、荒川ら(2010)により雪質に依存しない関係式が求められたが、平均粒径は薄片画像から3次元を推定して求めていた。現在では、X線CTによる積雪の3次元計測が可能であり、平均粒径が必ずしも代表値となっているといえなくなった。そこで、本共同研究では、固有透過度の関係式を更新することを目的とし、北海道千歳市周辺で発達するしもざらめ雪や道央地域で観測される乾いたしまり雪を対象に現地観測および雪試料採取をおこなう予定であったが、コロナ禍の影響により北海道観測を断念することとなり、山形県新庄市においてしもざらめ雪を除く雪質について観測を実施した。
図1 SSAvとDgと密度の関係 図2 固有透過度kとDgと密度の関係 
研究内容・成果 測定方法
場所は山形県新庄市の防災科学技術研究所雪氷環境実験所の露場で、2021年2月3〜9日にかけて積雪断面観測を実施し、雪質,密度を観測した後,測定する積雪層を切り出し、-5 ℃の低温室に持ち込み、通気度測定をおこない固有透過度kを,X線CTによる微細構造計測により単位積雪あたりの比表面積SSAv [mm-1],粒子の平均的な太さDg [mm]を求めた.対象とした雪質は、新雪、こしまり雪、しまり雪、ざらめ雪であった。
また、2019年2月14〜19日に実施した観測の結果も使用した。

結果と考察
図1はSSAv * Dgと密度を,図2はk / Dg^2と密度を比較したものである.SSAvはDgに反比例し,kはDg^2に比例すると言われており係数の密度依存性を調べることができる.図1〜2より,SSAv * Dg は荒川ら(2009)に比べ正の向きに密度依存が大きくなっており,k / Dg^2 は荒川ら(2010)に比べ負の向きに密度依存が大きくなっていることがわかる.片薄片は画像数枚で積雪層を代表していたが,X線CTはその数十倍もの画像を処理することでより積雪層の代表性を示すものと考えられることから,これまでの片薄片解析は過小評価の傾向が考えられる.今後は、観測数を増やすとともに、雪質の種類、特に霜系の雪質について観測を実施する予定である。

参考文献
荒川ら(2009): 季節積雪における体積比表面積と微細構造との関係, 雪氷, 71(1), 3-12.
荒川ら(2010): 季節積雪における固有透過度と微細構造に関する諸因子との関係, 雪氷, 72(5), 311-321.

図1 SSAvとDgと密度の関係 図2 固有透過度kとDgと密度の関係 
成果となる論文・学会発表等