共同研究報告書
研究区分 | 研究集会 |
研究課題 | 環境微生物学における革新的手法および生態系保全における活用法 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 横浜国立大学大学院環境情報研究院 |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 鏡味麻衣子 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 | 陶山 佳久 | 東北大学大学院 農学研究科 | 准教授 |
2 | 三木 健 | 龍谷大学 理工学部 | 教授 |
3 | 槻木 玲美 | 松山大学 法学部 | 教授 |
4 | 千賀 有希子 | 東邦大学 理学部 | 准教授 |
5 | 片野 俊也 | 東京海洋大学大学院 海洋科学技術研究科 | 准教授 |
6 | 程木 義邦 | 京都大学 生態学研究センター | 准教授 |
7 | 大林 夏湖 | 東京大学 総合文化研究科 | 特任研究員 |
8 | 大竹 裕理恵 | 東京大学 総合文化研究科 | 特別研究員 |
9 | 嶋田 敬三 | 首都大学東京理学研究科生命科学専攻 | 特任教授 |
10 | 丸山 正 | 北里大学 | 客員教授 |
11 | 大石 和恵 | 東京工芸大学 工学部 | 客員研究員 |
12 | 岡田 久子 | 明治大学 農学部 | 研究員 |
13 | 田淵 敬一 | 環境省水・大気環境局大気環境課 | 課長補佐 |
14 | 岡崎 友輔 | 産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門 | 特別研究員 |
15 | 久保 響子 | 鶴岡工業高等専門学校 創造工学科 | 助教 |
16 | 田辺 雄彦 | (株)テクノスルガ・ラボ | 研究員 |
17 | 松岡 俊将 | 兵庫県立大学 大学院シミュレーション学研究科 | 特任研究員 |
18 | 松倉 君予 | 新潟大学 佐渡自然共生科学センター | 助教 |
研究集会開催期間 | 令和 1 年 11 月 29 日 〜 令和 1 年 11 月 30 日 |
研究目的 | 次世代シーケンサーの登場により、広域な環境における微生物の組成や機能があきらかになると同時に、個体レベルでの違いを検出することも可能となりつつある。本集会では、革新的手法を用いて最新の研究結果を得ている研究者を招聘し、成果や発表して行くとともに、研究手法を詳細に紹介していただく。同時に、環境アセスメントやモニタリング、政策の策定に関わる行政関係者を招聘し、今後の発展性について議論する。特に、気候変動の影響を受けやすい寒冷圏生態系や、富栄養化の影響を受けやすい湖沼や沿岸海洋域の脆弱性の評価や保全に向けた研究の展開、展望を議論し、共同研究を発展させるきっかけとする。 |
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研究内容・成果 | 2019年11月29日(金)および30日(土)に研究集会「環境微生物学における革新的手法および生態系保全における活用法」を開催し、生態学および環境微生物学に関する19件の発表が行われた。 最初に、微生物個体・集団・種のDNA情報解析に活用できるゲノムワイドSNP分析法であるMIG-seq法についての紹介があった。この方法では、数百座以上の一塩基多型を解析でき、少量のDNAでもPCR増幅さえできれば解析できるため、微生物1細胞(1個体)レベルでの解析が可能となる。植物や昆虫を対象としたクローン(系統)識別や、集団遺伝、分子系統地理の解析結果が紹介され、微生物への適用可能性について議論した。特に湖底泥中のミジンコの休眠卵や植物プランクトン遺骸を対象にMIG-seqを適用することで、それらの侵入過程や個体群存続に関わる集団遺伝学的解析が可能となること、従来用いられてきたミトコンドリアDNAのマイクロサテライト領域や核DNAのITS領域との比較の観点から適用可能性についても意見交換が行われた。 次に微生物間の相互作用、とくに植物プランクトンとそれに寄生するツボカビやアメーバなど真核微生物について紹介があった。湖沼や海洋など水域生態系において、植物プランクトンにはウィルス、細菌類、真菌類、原生生物など多様な微生物が寄生するが、これらの多くはこれまでに記載されておらず、DNAデータベースに登録のないため、丹念な観察や単離培養が重要であることが指摘された。同時に、培養系が確立できた場合には、寄生生物の分布様式から寄生メカニズムが推定できることや、宿主―寄生者関係の解明にMIG-seq法が十分適用できることなどの示唆もあった。 バクテリアの海洋や湖沼での分布パターンの理解に、メタバーコーディングやメタゲノム、全ゲノム解析、さらにそれを踏まえた数理モデル解析や全ゲノム比較が有効であることが紹介された。またラン細菌の耐塩性獲得を例に遺伝子水平伝播の重要性や、陸上菌類の分布を河川水のメタバーコーディングから調べる手法、落ち葉分解菌の分布パターンを生葉中の内生菌類種組成から推測する研究のなど、次世代シーケンサーを活用したユニークな研究例が紹介された。 生態系における微生物の機能を理解する上で、全ゲノム解析や安定同位体標識による窒素循環の解明などの手法は有効であり、干潟の窒素循環や原油分解に関わる硫酸還元菌のゲノム、海岸に生息する新規光合成細菌、貝類の殻に生息する共生菌、海洋哺乳類に寄生するウイルスなどの研究紹介があった。最後に、環境行政の課題への環境微生物学的アプローチの重要性について言及があり、今後の研究の方向性について議論が行われた。これらの研究成果や本研究集会での議論を基に、今後も生態系や資源の適正な管理や保全に向けた更なる研究や政策の策定に貢献することが参加者全員の共通目標であることを最後に確認し研究集会を閉会した。 |
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研究集会参加人数 | 27 人 |