共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
岩塊斜面に形成される地下氷の観測手法の確立 |
新規・継続の別 | 継続(平成30年度から) |
研究代表者/所属 | 福山市立大学 |
研究代表者/職名 | 准教授 |
研究代表者/氏名 | 澤田結基 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
曽根敏雄 | 北大低温研 | |
2 |
森章一 | 北大低温研 |
研究目的 | 山岳永久凍土の下限高度付近では,巨礫が堆積する地形に永久凍土が分布する傾向にある.こうした永久凍土の成因として,礫層の空隙で生じる空気対流と地下氷の発達が重要であることがわかっている。空気対流については研究が蓄積されつつあるが,地下氷に関する研究は極めて少ない.こうした状況を生じている背景に,地下氷の観測手法が未確立であることが挙げられる.そこで昨年度の共同研究の枠組みによって,地下氷の消長を観測するための高密度地温計(センサ2cm間隔)を開発し,現地観測を開始した。本共同研究では,現地で得られつつある観測結果を回収し,現地で行う手動観測の結果と照合することで地温計の精度検証を行った。 |
研究内容・成果 | 2018年度の共同研究によって製作し,現地へ設置した高密度温度センサのデータを回収し,分析を行った。また比較のため,2019年5月から11月まで1か月おきに現地調査を行い,地下氷の深度をプローブで測定した。 温度観測の結果,2019年4月16日までは測定した全層が氷点下(約-4〜-3℃)であったが,4月17日に深さ1.84mまでの地温が-0.5℃〜0.0℃まで急上昇するイベントが観測された。このイベントの最高温度である0.0℃は深さ1.84〜1.80mに出現し,それよりも浅い深度では-0.4〜-0.1℃であった。この地温の急上昇は,地下氷の成長に伴う潜熱放出の影響である可能性が高いと考えられる。すなわち,氷点下の温度状態にある岩塊層空隙に融雪水が流入して地温上昇が生じ,氷が成長した深さで最も大きく昇温したのであろう。 4月17日以降,こうした全層にわたる地温上昇は複数回発生し,いずれもその下部に最高温度(0℃)の温度領域が現れた。また,0℃の温度領域の下限は,時間の経過とともに上昇する傾向を示した。この傾向は,水の凍結潜熱が発生する深さが上方へ移動する,すなわち地下氷の成長を示すと解釈できる。 以上より,高密度温度センサを用いた観測方法では,岩塊斜面の地下空隙に生じる氷の成長過程をとらえることができると考えられる。 なお得られた成果は,2020年6月のInternational Conference on Permafrost (中国)にて発表する予定であったが,COVID-19のため学会が延期となった。また同じく発表を予定していた日本地理学会2020年春季学術大会も中止となり,学会Web上で発表予定である。 |
成果となる論文・学会発表等 |