共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

民生用重量計を利用した積雪重量自動計測システムの無線通信による冗長化
新規・継続の別 継続(平成28年度から)
研究代表者/所属 東京都立産業技術高等専門学校
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 高崎和之

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

若林良二 東京都立産業技術高等専門学校 教授

2

的場澄人 北大低温研

3

三寺史夫 北大低温研

4

高塚徹 北大低温研

研究目的 本研究は、平成29年度共同研究で開発した民生用重量計を用いた積雪重量自動計測システムの改良である。積雪重量計による観測は、水循環や雪質等の検討において重要であり、多くの研究で実施されている。我々は、これまでコスト面で難しいとされていた広大なエリアの詳細な観測の実現に向けて安価な自動計測システムを開発しており、これまでの観測実験の結果から、温度など複数項目を増やしたり、野生生物部によるケーブルの損傷対策としてデータロガー内蔵型にするなどの改良を行った。本年は無線LANやBluetoothを利用したワイヤレスデータ伝送による冗長化を行い、より信頼性の高い観測装置の実現を目指すことを目標とした。
受信信号強度と積雪深の変化  
研究内容・成果 本研究では、安価かつ容易に入手可能な民生用体重計を利用した簡易型積雪重量計の開発を行っており、これまでの共同研究で、数ヶ月間の自動無人観測が行えることを確認した。しかし、動物によってケーブルが傷つけられ観測が中断したり、設置作業の効率化の観点から無線によるデータ伝送が必要と考えている。そこで、本研究では無線LAN等に用いられる2.4GHz帯の電波の雪による減衰特性を調査した。
研究は当初の計画通り、事前にメールベースで打ち合わせを実施し、9月の出張を伴う打合せで実験内容と実験場所、設置手順の確認、12月に実験装置(データ収集部)の設置を行った。12月の時点では積雪が少なく、センサが露出する状況であったため、計測部は1月6日に設置を行った。開発した積雪重量計は、データ収集部と計測部から構成され、データ収集部に内蔵したシングルボードコンピュータ(Raspberry Pi2)とLTEモデムによって、公衆回線を通じて産業技術高等専門学校(東京)に設置したサーバーに定期的に観測結果を伝送するようになっており、常時稼働状況をモニターできるようになっている。
本研究では、データ収集部と計測部に内蔵した無線LANモジュール間で無線通信を行い、観測結果を安定して伝送できるか評価を行った。情報の伝送方法は、無線LANアクセスポイント(親機)が定期的に送信するビーコンと呼ばれる信号に観測データを重畳することを想定し、計測部に内蔵したモジュールが送信するビーコンをデータ収集部で受信できるか、またそのときの受信信号強度RSSIを用いて積雪量に対する減衰量を調査した。無線LANモジュールにはESP-WROOM-02を使用し、2.4GHz帯の電波を利用して実験を行った。
 2020年1月7日から2月29日までの54日間、10秒毎にSSID取得の可否と信号強度RSSIを観測した結果を図1に示す。積雪深は気象庁ホームページより取得したアメダス(札幌)の観測結果を用いている。また信号強度は1時間ごとの平均値である。実験の結果、全466560回中、ビーコンを受信できなかったのは169回(0.04%)であったが、受信不能となるタイミングは積雪深と関係が見られず、1月23日20時45分から23時05分の間に45回、2月3日8時04分から11時43分の間に95回、2月23日11時29分から11時36分の間に26回、2月24日9時03分から9時04分の間に2回、2月25日11時30分に1回発生していた。次に信号強度と積雪深の関係に注目をすると、1月20日や2月4日、2月6日に積雪深が大きく増加すると、信号強度が増加する傾向が見られる。一方2月14日から15日にかけて積雪深が減少しているときにも信号強度が増加しており、積雪深のみを用いて減衰量を推定することはできないことが確認された。この原因は、水の誘電率が状態によって大きく変化することであると考えられる。今後は、積雪中の雪の状態も観測しながら更なる検証を行いたい。
受信信号強度と積雪深の変化  
成果となる論文・学会発表等