共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
海洋低次生態系における食物網構造の決定と水銀濃縮過程の解明 |
新規・継続の別 | 継続(平成30年度から) |
研究代表者/所属 | 国立水俣病総合研究センター |
研究代表者/職名 | 特別研究員 |
研究代表者/氏名 | 多田雄哉 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
丸本幸治 | 国立水俣病総合研究センター | 室長 |
2 |
力石嘉人 | 北大低温研 |
研究目的 | 本研究の目的は、1. 海洋低次生態系を構成する、動物プランクトン、植物プランクトン、原生動物、バクテリアなどの微小生物を対象に、アミノ酸の安定窒素同位体比を測定することで、各微小生物の栄養段階を数値化し、低次生態系における食物網の構造を明らかにすること、2. これと同時に微小生物群中のメチル水銀濃度を測定することで、プランクトンへの水銀の生物濃縮と栄養段階との関係性を評価することである。これらの成果は、現在、情報が稀少である「海洋低次生態系における食物網および水銀の生物濃縮過程」の正確な理解に貢献できる。 |
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研究内容・成果 | プランクトン試料のアミノ酸同位体比およびメチル水銀濃度データの蓄積のため、新たに2019年4月および7月に熊本県の水俣湾中央において海洋観測を実施し、分析に供するプランクトン試料を取得した。水中ポンプを用いて表層海水30 -1000 Lを採取し、異なる目合いのプランクトンネットを用いて、10-100 μm、100-330 μm、>330 μm画分のプランクトンを採取した。採取したプランクトンを遠心により濃縮し、凍結乾燥したものを、アミノ酸安定窒素同位体比分析試料とし、GF-75ガラスファイバーフィルターに濾過・捕集して凍結乾燥し、重量測定したものをメチル水銀分析用試料とした。 アミノ酸安定窒素同位体比に関しては、アミノ酸抽出、誘導体化後、GC-IRMSによる安定同位体比分析を実施し、メチル水銀濃度分析に関しては、プランクトンをアルカリ溶解した後、ジチゾンを用いた抽出、エチレーション後、バブリングすることでHgをTenaxトラップに吸着させ、GC-AFSで分析した。 アミノ酸安定窒素同位体比分析の結果、2019年4月の試料について、10-100 μm、100-330 μm、>330 μm画分のプランクトンの栄養段階は、それぞれ1.5、1.9、2.1であり、7月の試料については1.6、1.7であった (7月の>330 μm画分のデータについては、試料量が少なく正確な分析ができなかった)。これらのことから、前年度の試料(2018年7月・10月)と同様、プランクトンのサイズが大きくなるに従って、栄養段階が上位になることを定量的に示すことができた。また、メチル水銀分析の結果、4月に取得した10-100 μm、100-330 μm、>330 μm画分のプランクトンのメチル水銀濃度は、それぞれ3.8 ng/g、5.8 ng/g、5.9 ng/gであり、7月の試料に関してはそれぞれ6.1 ng/g、3.69 ng/g、5.7 ng/gであった。4月の試料に関しては、栄養段階が上位になるに従ってメチル水銀濃度の上昇が見られた。一方で、7月の試料では100-330 μm画分のメチル水銀濃度が他の画分より低濃度であったことから、栄養段階とメチル水銀生物蓄積との関係は季節によって変化する可能性が考えられた。 本研究では、水中ポンプを用いた大量のプランクトン試料採取、低温研の改良型GC-IRMS、本研究所の高感度メチル水銀分析を用いた解析を実施することで、低次生態系を構成する微小生物群の栄養段階とメチル水銀蓄積との関係を評価することができた。今後も、共同研究を推進し、これらのデータを蓄積してゆくことで海洋低次生態系における栄養段階の決定(定量化)とメチル水銀濃縮過程を明らかにしてゆく。 |
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成果となる論文・学会発表等 | Tada Y, Marumoto K: Uptake of methylmercury by marine microalgae and its bioaccumulation in them. J. Oceanogr., 2020; 76: 63-70. |