共同研究報告書
| 研究区分 | 一般研究 |
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研究課題 |
落葉樹林の林床の常緑草本の葉における低温ストレスへの光合成系の保護機構の解明 |
| 新規・継続の別 | 継続（平成30年度から） |
| 研究代表者／所属 | 東京薬科大学生命科学部 |
| 研究代表者／職名 | 教授 |
| 研究代表者／氏名 | 野口航 |
| 研究分担者／氏名／所属／職名 | |||
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氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
田中亮一 | 北大低温研 | |
| 研究目的 | 落葉樹林の林床は夏は高温だが弱光、冬は強光だが低温という環境である。常緑草本種のタマノカンアオイやオウレンは1年の季節変化に応じて光合成系を維持している。強光ストレスから光合成系を保護する機構として色素系の変化や光合成系タンパク質の変化が知られているが、冬の低温・強光下の常緑草本種の葉の光合成系の保護機構は不明であった。田中博士との共同研究から、タマノカンアオイの光合成色素系はモデル植物とは異なった組成や季節変化を示すことが明らかになりつつある。そこで本年度は継続研究課題として、タマノカンアオイおよび同じようなフェノロジーを示すオウレンの葉の光合成系色素の季節変化を調べることを目的とした。 |
| 研究内容・成果 | 申請者が所属する大学構内の落葉樹林の林床に自生する常緑草本種のタマノカンアオイとオウレンを用いた。自生地の光環境や気温を継続して測定するとともに、鉢に移植し、自生地に置いたタマノカンアオイの葉の光合成速度を、ガス交換法、クロロフィル蛍光法やP700の吸収測定法で定期的に測定した。測定の結果、飽和光下のCO2吸収速度、Rubisco活性の指標であるA-Ciカーブの初期勾配、電子伝達活性の指標である最大値、光合成電子伝達速度はどれも夏は低く、秋から冬に増加した。特に飽和光下のCO2吸収速度とA-Ciカーブの初期勾配との間に強い相関があり、Rubisco量や活性がCO2吸収速度の季節変化に大きく影響を与えることが示唆された。オウレンの葉でもクロロフィル蛍光法やP700の吸収測定法で定期的に測定した。どちらの種でも過剰な光エネルギーの散逸を示すNPQが夏から秋・冬に増加した。 2018年度にサンプリングしたタマノカンアオイの葉および2019年度にサンプリングしたオウレンの葉を用いて、2018年10月と同様に、2019年9月に田中亮一博士の研究室のHPLCシステムを利用して、光合成色素のクロロフィルとカロテノイドの測定を行なった。タマノカンアオイの葉では、弱光の夏に光捕集に機能するα-カロテンやルテインエポキシド、ビオラキサンチンは蓄積したが、強光の冬にはどのカロテノイドも量が低下していた。一方、光保護に機能するゼアキサンチン、ルテイン、ネオザンチンなどのキサントフィルやβ-カロテンは夏に少なく秋から冬に増加した。これらのカロテノイドは冬に増加することで、低温・強光下での過剰な光エネルギーを散逸し、葉の保護に機能していると考えられる。夏季にサンプリングしたオウレンの葉でもタマノカンアオイと同様の結果が得られた。 |
| 成果となる論文・学会発表等 |
野口 航， 川元豪基， 雪下赳， 三宅克典「オウレンの葉の光合成特性の季節変化の解析」薬用植物栽培研究会第2回研究総会 2019/11/23-24（高知市文化ブラザかるぽーと， 高知） 和田尚樹， 近藤壱星， 尾崎洋史， 野口 航「絶滅危惧種タマノカンアオイの葉の光合成系の季節変化の解析」日本植物学会第83回大会 2019/9/15-17（東北大学川内キャンパス、仙台市） |