共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
多周波・偏波レーダを利用した固体降水観測技術の高精度化 |
新規・継続の別 | 継続(平成30年度から) |
研究代表者/所属 | 名古屋大学宇宙地球環境研究所 |
研究代表者/職名 | 主任技師 |
研究代表者/氏名 | 民田晴也 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
川島正行 | 北大低温研 | 助教 |
研究目的 | 偏波レーダシグナルを利用した粒子種別毎の粒径分布の遠隔観測技術の実現は、レーダ降雪強度推定の高精度化と雲微物理過程の観測的理解深化につながる。本研究では、偏波降水レーダと地上固体降水粒子の同期観測を実施、固体降水のミリ波・マイクロ波散乱特性を理論的・観測的に調べ、レーダ降雪強度推定と降水粒子の種別識別アルゴリズム開発で参照できる粒子物性と散乱特性データベースを開発する。レーダ観測は9GHz, 24GHz降水レーダに加え、乾雪の感度が期待できる35GHz雲レーダを利用した多波解析から固体降水のレーダシグナルの特徴理解をより深める。 |
研究内容・成果 | 2020年1月中旬から3月中旬の間、粒子立体形状と落下速度を計測するMulti-angle Snowflake Imager(MSI)に電子天秤を増設、粒子密度の高精度観測を低温科学研究所(ILTS)で実施した。今年度の観測データ解析は今後の課題である。 2018年度に実施した3周波降水レーダ(9/24/35GHz)と地上降雪粒子 同期観測データから事例解析を報告する。図1に観測機器の配置概要を示す。レーダは酪農学園大学に名古屋大学35GHz偏波雲レーダ(Ka-POL)、ILTS中庭に24GHz鉛直ドップラレーダ(MRR)、ILTS屋上に降水観測に応用した9GHz船舶レーダ(ILTS-X)を配置。地上観測はILTS中庭でMSI,2DVD,電子天秤型降雪強度計を運用した。図2に、2019年1月の3周波の観測レーダ反射因子Zm(ILTS上空300m)と地上観測降雪強度SRの関係を示す。SRに対しZmはKa-POL(35GHz)が最小、ILTS-X(9GHZ)が最大、その間にMRR(24GHz)のZmが現れ、隣接周波数間では約6dBの差を示す。多周波レーダ解析を目標に、2周波レーダ反射因子比(DFR)を調べたが、厳冬期の降雪ではDFRに顕著なシグナルは確認できなかった。図3に2019年1月11日の事例を示す。図はDFR、SR、MSI等価体積球径の粒径分布、落下速度、粒子縦横比、MSI立体粒子形状から数値再現したZdrとKa-POL観測Zdrの時系列を示す。MSI立体形状は粒子幅1mm以上の画像から合成するため1mm径以下の粒子が含まれていない。個々の粒子後方散乱断面積σは粒子密度を7%と仮定、FDTD法を用い算出した。10分間毎に水平・垂直両偏波のσを積算、レーダ反射因子比Zdrを求めた結果である。図3に水平・垂直偏波の後方散乱断面積比σh/σvの出現頻度分布とZdr再現値を示す。Zdr数値再現とレーダ観測値の一致を確認でき、水平・垂直偏波間のレーダ反射因子の相対評価として結果が得られた。レーダ反射因子の絶対値,ρhv,kdpなど偏波シグナルの評価には立体形状合成できない微小粒子(球形近似は可能)を含む観測粒子の絶対数評価が必要であり、評価手法を検討している。DFRとMSI観測粒子特徴の関係性では、この事例ではMRR Zmが弱い傾向にあるが、MRRとKa-POLのDFRが負の値を示す時間帯(07:00-08:00, 09:00-10:00)に、落下速度の速い霰の存在が示唆され、Zdrも球形(0dB)よりの値を示した。落下速度の遅い雪片が多い時間帯(03:00-04:00)では、MRRとKa-POLのDFRは4dB程度、Zdrは0.5 dBを示す傾向を確認、今後、レーダシグナルの周波数特性と固体降水物性の関係を精査、固体降水観測技術の高精度化への発展を目指す。 |
成果となる論文・学会発表等 | 民田晴也,久島萌人,篠田太郎,川島正行,藤吉康志, 2019: 降雪粒子立体形状とミリ波偏波レーダシグナル, 日本気象学会2019年度秋季大会, 福岡国際会議場, 2019.10.28-31, C308 |