共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

格子ボルツマン法LESモデルを用いた都市大気境界層の大規模計算
新規・継続の別 継続(平成30年度から)
研究代表者/所属 東京工業大学
研究代表者/職名 助教
研究代表者/氏名 稲垣厚至

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

小野寺直幸 日本原子力研究開発機構 研究員

2

渡辺力 北大低温研

3

下山宏 北大低温研

研究目的 本研究は格子ボルツマン法を用いた、実環境に近い都市街区の気流計算を目的とする。格子ボルツマン法はナビエ・ストークス式ではなくボルツマン方程式により表現された流体計算モデルであり,その数値計算アルゴリズムの単純さから,GPGPUや大規模並列計算機を用いた計算に対して高い計算効率を有している。本モデル開発はGPUをベースとした大規模計算資源を有効活用できる利点がある。本年度は昨年度までに開発した数値計算モデルに植生効果を導入し、より現実的な都市流体抵抗の計算を実現する。
  
研究内容・成果 本年度の研究では、格子ボルツマン法を用いた都市の現実的な流体抵抗計算を目指したモデル開発を行った。まず剛体壁面の境界条件に関して、これまでのモデルではBounce Back境界条件を用いて計算を行っていたが、微気象計算のように数メートル程度の格子解像度でそれを用いると、上空の風は実際の風速をよく再現できるものの、壁面近傍第一層の風を過小評価することが、解像度を変えた計算により明らかとなった。これを解決するために、壁関数の導入を検討した。格子ボルツマン法ではNavier Stokes式の差分方程式で使われる壁関数の計算手法をそのまま使うことができない。これに対し本研究は韓ら(2019)の手法を用いて、壁関数による速度場の修正を行った。この方法では、まず滑面境界(鏡面反射条件)として壁面に衝突する粒子の挙動を計算し、そこから摩擦速度を計算して、それを壁に向かう成分のみに作用させて速度場を修正する。これにより壁面近傍の速度勾配も再現可能となる。本モデルを用いて、2mと0.5m街道度での都市の流体計算を実施し、壁関数の導入による速度場の改善を確認した。また、本モデルに植生抵抗を葉面積密度の関数として定義し(Watanabe 2004)、植生抵抗の導入を行った。

参考文献:
韓 梦涛、大岡龍三、菊本英紀、格子ボルツマン法に基づいたLESにおける壁関数の実装.日本流体力学会年会2019.
Watanabe T, Large-eddy simulation of coherent turbulence structures associated with scalar ramps over plant canopies. Boundary-Layer Meteorology, 112, pages 307–341, 2004.
  
成果となる論文・学会発表等 稲垣 厚至、小野寺 直幸、渡辺 力、神田 学、青木 尊之、格子ボルツマン法による大気境界層の計算、日本気象学会2019年度春季大会