共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

次世代イメージング装置の生体試料への応用
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 北大理学研究院
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 伊庭靖弘

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

竹田祐介 北大理学研究院 学振PD

2

中村晃輔 北大理学部 技術職員

3

力石嘉人 北大低温研 教授

研究目的 近年,試料の観察・測定が2Dから3Dに急激にシフトしている.これまで申請者は,新機構のトモグラフィ装置を開発し,試料内部の構造の高精度可視化に取り組んできた.今後,生物標本への応用や有機化合物の各種化学的データとの融合ができれば,生理学・生態学へ革新的技術となりえる.一方,トモグラフィ分析は長時間に及ぶため,装置各部の状態・動態監視などの安定的な分析を可能にするインフラ構築が課題となっている.本研究では,この問題を解決するために,装置の長期モニタリングおよびIoT化をシングルボードコンピューターによって構築することを目的とした.このインフラを構築した後,生物標本への応用を目指した.
  
研究内容・成果 Raspberry Piを用いた装置のIoT化およびデータロガー開発:Raspberry Piとは,ARMプロセッサを搭載したシングルボードコンピューターであり,現在では,様々な低コスト測器の制作や各種装置のIoT化へ貢献をしている.本研究では,Raspberry Pi model B plus 3およびRaspberry Pi ZEROの2つの機種を選定した.次にこれらのGPIO端子用のアダプタを設計・制作した.これに温度,湿度,水位,水質センサーなど各種センサーを搭載し,装置各部に設置した.各種センサーには必要に応じて特殊防水加工を施した.研究期間途中において,seeed社のGroveシステムのパーツと拡張ボードを取り入れ,開発・制作プロセスを簡素化した.データは,センサーと用途に応じて5秒から10分毎に取得可能とし,それらをグラフ化したものをpng画像化し,パブリッククラウドにアップロードする仕組みとした.温度センサーについては,魚類飼育水槽にも設置した.

生物標本作成技術の開発:上述のインフラを用いて長時間の分析の安定性を検証すると同時に魚類を用いた実践研究を行った.分析試料として,ゼブラフィッシュを用いた.断層像取得に特化した標本作成手法・手順を新たに開発した.

研究結果:研究の結果,長期間にわたり安定的にデータ取得を行うことが可能となった.最もはやく設置した温度・湿度センサーは,200日以上安定的にデータを取得・アップロードし続けられた.Raspberry Pi本体のショートでデータ取得が一次中断されたことを除くと,他の全てのセンサーも設置以来,安定的にデータを取得し続けている.本研究により,装置各部の状態,動態を正確に理解することが可能となり,またIoT化により分析にかかる時間・不安コストを大幅に削減することに成功した.
  
成果となる論文・学会発表等 伊庭靖弘,次世代トモグラフィー装置の開発ー病理学への革新的技術提供を目指してー第16回日本病理学会カンファレンス:テクノロジーの進歩とともに発展する病理学,招待講演,2019年8月,札幌.