共同研究報告書


研究区分 研究集会

研究課題

水環境の保全と再生に向けた環境微生物学・水環境学の最前線
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 京都大学生態学研究センター
研究代表者/職名 特定准教授
研究代表者/氏名 程木義邦

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

嶋田敬三 首都大理工 特任教授

2

田淵敬一 大阪府庁 主査

3

平尾聡秀 東大秩父演習林 講師

4

片野俊也 海洋大海洋科学技術研究科 准教授

5

鏡味麻衣子 横浜国立大学 教授

6

久保響子 鶴岡高専 助教

7

岡田久子 明治大農 研究員

8

丸山正 北里大学 客員教授

9

大石和恵 東京工芸大学 研究員

10

岩田智也 山梨大循環システム 准教授

11

河合滋 首都大学東京 大学院生(博士課程)

12

岡崎友輔 産総研 研究員

13

Somya, Deb 京大生態研 研究生(修士)

14

程木義邦 京大生態研 特定准教授

15

福井学 北大低温研 教授

研究集会開催期間 平成 30 年 11 月 9 日 〜 平成 30 年 11 月 9 日
研究目的 日本では高度経済成長期以降、湖沼や内湾への栄養塩負荷量の増加による人為的富栄養化が進行し、アオコ・赤潮の発生、有機汚濁物質の増加、それに伴う底層の貧酸素化や嫌気化など、水資源や水産資源の保全上、好ましくない環境が形成されてきた。これらの解決には、水環境における物質循環、とりわけ水質に直接影響を与える微生物の機能や微生物が関わる物質循環のより深い理解が必要である。本研究集会では、次世代シーケンサーを用いた網羅的微生物群集解析や環境メタゲノム解析などの革新的手法を用いて得られた最新の研究成果を発表すると共に、今後の環境微生物学の展望や研究アプローチについて議論する。
  
研究内容・成果  2018年11月9日(金)に研究集会「水環境の保全と再生に向けた環境微生物学・水環境学研究の最前線」を開催し、水環境学および環境微生物学に関する15件の発表が行われました。
 本研究集会では、1)嫌気環境や極限環境に生息する微生物の多様性と生態、2)湖沼や海洋沖帯の微生物食物網を構成する生物の生態、3)陸域・河川・海洋における環境問題の3つのセッションで行いました。一番目のセッションでは、環境中のヒ素循環で重要な嫌気性の亜ヒ酸酸化細菌の多様性、硫黄不均化細菌と硫酸還元菌の比較ゲノム研究、雪氷藻に含まれる微生物群集の種間相互作用や緑色糸状性細菌の生態についての発表がありました。また、これまで研究事例が極めて限られている酸性河川では、真核藻類や光合成細菌などの光合成生物ではなく、化学合成細菌が主要な一次生産者となり食物連鎖を駆動している可能性についても示唆されました。
 2番目のセッションでは、湖沼や海洋の沖帯で主要な一次生産者である植物プランクトンの遊泳機能や生活史、種間競争に関する研究と共に、分子生物学的手法を用いた水界微生物の生活史と多様性解析に関する最新の研究事例や今後の展望についての発表がありました。また、植物プランクトンに寄生するツボカビやウイルスについては、シングルセルPCRやメタゲノムを用いた研究結果の発表に基づき、その多様性や水界微生物網での機能についての議論がありました。
 最後のセッションでは、陸域から海洋までの幅広い環境における環境問題に関係した5件の発表がありました。近年、森林で問題になっているシカによる食害による植生や土壌微生物群集への影響の研究では、食害の影響により微生物群集の多様性が上昇する場合があるとの指摘がされました。都市河川の中流域を対象とした研究では、降雨時の河川流量増加時に堤外地で流路変更が生じ、その結果、河床形態の多様性が増大する可能性が示唆されました。また、近年、海洋の環境問題として注目されているマイクロプラスチック汚染について、地球規模・日本近海の汚染状況とともに、国内外の動向についての報告がありました。
 本研究集会では、難培養微生物を対象とした基礎研究から、海洋汚染という地球レベルでの環境問題まで幅広いテーマについて最新の研究発表がありました。特に微生物については、比較ゲノム研究や環境メタゲノミクス解析などの最新技術を用いた研究とともに、自然界におけるヒ素循環、酸性河川の一次生産、寄生性のツボカビやウイルス、雪氷微生物の多様性など、これまで研究事例が限られている研究について、その重要性や今後の展望について活発な議論が行われました。これらの研究成果や本研究集会での議論を基に、今後も水環境や水資源の適正な管理や保全に向けた更なる研究や政策の策定に貢献することが参加者全員の共通目標であることを最後に確認し研究集会を閉会しました。
  
研究集会参加人数 24 人