共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

海洋植物プランクトンの窒素源推定⼿法の確⽴
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 海洋研究開発機構
研究代表者/職名 技術研究員
研究代表者/氏名 吉川知里

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

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力石嘉人 北大低温研

研究目的 セルソーターによる海水中の懸濁粒子からクロロフィル蛍光を持つ粒子(植物プランクトン細胞)の分取と、その粒子に含まれるアミノ酸の窒素同位体比測定を組み合わせ、「海洋の基礎生産における窒素源のうちわけを推定する方法」を確立する。
  
研究内容・成果 本年度は、植物プランクトン細胞の化合物レベル窒素同位体比測定の予備実験として、西部北太平洋で採取した海水中の懸濁粒子からクロロフィル蛍光を持つ粒子(植物プランクトン細胞)のセルソーターによる分取と全窒素同位体比測定を行った。サンプルは、MR14-04航海の西部北太平洋の亜寒帯定点(St.K2)と亜熱帯観測点(St. 01)、KS-16-8航海の亜熱帯観測点(St.30N・KEO), KH15-J01航海の亜寒帯定点(St.K2)でいずれも7月に採取したものを用いた。植物プランクトン細胞の全窒素同位体比測定用試料は、クロロフィル極大(St.K2:30m、St.01:75m、St. 30N・KEO:100m)の海水20Lを限外ろ過して、MW>100,000の懸濁粒子を濃縮し、PFAで固定した後、液体窒素で瞬間凍結し、-20℃で凍結保存して持ち帰った。持ち帰った懸濁粒子試料は、ラボにて解凍後セルソーターを用いて懸濁粒子から植物プランクトン細胞を分取し、0.3μmのGF-75フィルターでろ過し、EA-IRMSで全窒素同位体比を測定した。硝酸の窒素同位体比測定用試料は、クロロフィル極大の海水50mlを0.45μmのフィルターでろ過し、ろ液を-20℃で凍結保存して持ち帰った。持ち帰った海水は、スルファミン酸で亜硝酸を除去した後、脱窒菌法で硝酸をN2Oに変換し、窒素同位体比を測定した。植物プランクトン細胞の全窒素同位体比は、亜寒帯観測点で-5.9〜+0.6‰、亜熱帯観測点で+0.0〜+2.0‰だった。一方で硝酸の窒素同位体比は、亜寒帯観測点で+8.5〜+9.9‰、亜熱帯観測点で+5.0〜+8.1‰だった。植物プランクトン細胞の窒素同位体比は、亜熱帯よりも亜寒帯の方が低く、主要な基質である硝酸の窒素同位体比とは全く異なる傾向を示した。今後は、濃度は低いものの硝酸と供に主要な窒素態栄養塩であるアンモニアの同位体比測定と、植物プランクトン細胞の化合物レベルの窒素同位体比測定も行うことで、当海域の基礎生産における窒素源について詳細に考察したいと考えている。
  
成果となる論文・学会発表等