共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
個体の空間配置情報を取り入れた植物個体群のサイズ構造モデルの改良 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 早稲田大学人間科学学術院 |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 横沢正幸 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
原登志彦 | 北大低温研 |
研究目的 | 申請者らはこれまで開発・改良してきた空間情報を明示した植物個体ベースモデルを援用して、多数の個体の相互作用の重ね合わせによって創発する諸現象のメカニズムを解明してきた。本研究は、それらを適切に再現する補正スキームを空間情報を捨象したサイズ構造モデルに導入することを目的とする。それにより、人間活動由来の気候変動が陸域生態系へ及ぼす影響を評価・予測するために、環境変動に対する植生分布の応答を植物個体間および環境との相互作用の素過程から記述しシミュレートするモデルの高度化を目指す。 |
研究内容・成果 | 空間モーメント近似を数値的に計算する場合、格子状に対象エリアを分割することで、2次モーメントの時間発展を計算していく。このとき、一定条件下でサイズクラスごとの個体密度が過大評価になる。このため空間モーメント・モデルでは空間明示型個体ベースモデルのサイズ分布をよく再現できないことがある。先行研究であるAdams et al. (2013)らの研究結果でもこの問題が見受けられる。この問題を解決するため、それぞれの条件における2次モーメントにおけるサイズクラス$s$の個体が受ける競争強度$¥Phi(s,s’,¥xi')$の改良を行なった。 従来の方程式(Adams et al., 2013)は以下である。 ¥[ ¥Phi(s,s',¥xi')=¥int F(s,s'',¥xi'')n(s,s'',¥xi'')d¥xi''ds''¥¥ n(s,s'',¥xi'')= ¥begin{cases} ¥frac{m_{3}(s,s',s'',¥xi',¥xi'')}{m_{2}(s,s',¥xi')}+1 & ¥mathrm{if}¥quad s'=s'' ¥mathrm{and} ¥quad ¥xi'=¥xi'' ¥¥ ¥frac{m_{3}(s,s's'',¥xi',¥xi'')}{m_{2}(s,s',¥xi')} & ¥mathrm{otherwise} ¥end{cases} ¥] $F(s,s'',¥xi'')$はサイズクラスsが受ける$s''$の個体からの競争強度である。$s''$の個体は$s$の個体からベクトル$¥xi''$の位置にいる。$n(s,s'',¥xi'')$はその個体数である。今回提案する方程式における$n(s,s'',¥xi'')$は以下である。 n(s,s'',¥xi'')= ¥begin{cases} ¥frac{m_{3}(s,s',s'',¥xi',¥xi'')}{m_{2}(s,s',¥xi')}-1 & ¥mathrm{if}¥quad s=s'=s'' ¥quad¥mathrm{and} ¥quad |¥xi'|=0 ¥quad¥mathrm{and} ¥quad |¥xi''|=0 ¥¥ ¥frac{m_{3}(s,s's'',¥xi',¥xi'')}{m_{2}(s,s',¥xi')}-1 & ¥mathrm{if}¥quad s=s'¥neq s'' ¥quad¥mathrm{and} ¥quad |¥xi'|=0 ¥quad¥mathrm{and} ¥quad |¥xi''|=0 ¥¥ ¥frac{m_{3}(s,s's'',¥xi',¥xi'')}{m_{2}(s,s',¥xi')}-1 & ¥mathrm{if}¥quad s=s'=s'' ¥quad¥mathrm{and} ¥quad |¥xi'|¥neq 0 ¥quad¥mathrm{and} ¥quad |¥xi''|=0 ¥¥ ¥frac{m_{3}(s,s's'',¥xi',¥xi'')}{m_{2}(s,s',¥xi')}-1 & ¥mathrm{if}¥quad s=s'¥neq s'' ¥quad¥mathrm{and} ¥quad |¥xi'|¥neq 0 ¥quad¥mathrm{and} ¥quad |¥xi''|=0 ¥¥ ¥frac{m_{3}(s,s's'',¥xi',¥xi'')}{m_{2}(s,s',¥xi')} & ¥mathrm{otherwise} ¥end{cases} この結果、図1に示すように、従来の空間モーメントモデル(実線)は空間明示型個体ベースモデル(点線)のサイズ分布に比べなだらかな分布になっており再現できていない。一方、図2に示したように、今回提案した空間モーメントモデル(実線)では空間明示型個体ベースモデル(点線)のサイズ分布の挙動をほぼ再現できることがわかった。 |
成果となる論文・学会発表等 |