共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
サブkm解像度の数値モデルによる発雷を伴う降雪雲の内部構造の解明 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 気象研究所 |
研究代表者/職名 | 室長 |
研究代表者/氏名 | 山田芳則 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
|
所 属
|
職 名
|
|
1 |
林修吾 | 気象研究所 | 主任研究官 |
2 |
川島正行 | 北大低温研 |
研究目的 | 石狩平野や石狩湾上に出現する降雪雲には、発雷する雲とそうでないものがある。現在でも発雷する降雪雲の内部構造については明らかになっていないことが多い。発雷には雲内でのあられや過冷却雲粒、氷晶などの時空間分布に関する微物理構造や上昇流の強さが鍵である。発雷を伴う降雪雲の構造を明らかにすることは、電荷分離や発雷のメカニズム解明に寄与するだけでなく、雲内での降雪形成機構の解明にも貢献する。本研究の目的は、サブkm解像度の数値モデルを用いて発雷を伴う降雪雲の内部構造の特徴を発雷しない降雪雲と比較することによって明らかにすることである。 |
研究内容・成果 | 発雷を伴う時とそうでない時の降雪雲の構造の違いを調べるため、降雪時の発雷の有無の事例を札幌管区気象台の地上観測日報やLIDENデータなどに基づいて抽出し、発雷ありの3事例(2016年2月9〜10日、2016年3月1日、2018年1月23日)と無しの3事例(2018年1月6日、2018年1月12日、2019年1月11日)それぞれについて気象庁非静力学モデル (JMA-NHM) を用いて水平解像度 0.5 km で実験を行った。発雷を伴わなかった降雪雲では、降雪量が比較的多い事例を選択した。鉛直層数は 60 とした。雲内での電荷分離にはあられが関与するため、それぞれの事例について異なる3つのバルク微物理モデルを用いて実験を行い、モデルで再現された降雪雲内でのあられの量に特に注目した。用いた微物理モデルは、JMA-NHM の元々のモデル (以後 ISM と記述)、Yamada (2016), 及び Yamada (2018) のモデルである。Yamada (2016) では、NHM に比べてモデル自由度の拡張と大幅な高度化を図っている。たとえば、粒径分布へのガンマ関数の導入やNHM で用いられている非常に旧いパラメタリゼーションの改良と高度化、あられ過程の高度化、併合過程での厳密解の使用などである。Yamada (2018) のモデルでは、Yamada (2016) を基礎として、雲氷と雪とを一つのカテゴリー(雪結晶)にまとめることで、小さな氷晶から雪までの自然な成長を表現することができるようになっている。 数値実験結果から札幌を中心とする 100 km 四方の領域における解析により、発雷の有無にかかわらず、全般的にあられの量は雪に比べて非常に少ないことがわかった。実際、鉛直積算したあられの質量の多くは、雪に比べて約 0.01 のオーダーであり、あられがほとんど存在しない事例もみられた。しかし、発雷を伴う場合にはあられの量は比較的多くなる傾向があったので、発雷する降雪雲の特性は定性的にはある程度表現されていると考えられる。一例として、図1と2には2018年1月23日の事例について、それぞれ鉛直積算した雪とあられの質量の空間分布を示す(これらの図で陰影のスケールが異なる)。あられだけでなく、雪や降雪量の面的な分布も用いた微物理に依存して大きく異なる場合がみられた。降雪雲内での雪やあられを適切にモデルで表現することは現在も非常に困難である。モデル結果を検証できるようなデータがほとんど存在しないとはいえ、発雷を伴う降雪雲の再現性を向上させるためには、降雪雲の構造やその時間発展を適切に表現するモデルの構築に継続して取り組むことが必要である。 |
成果となる論文・学会発表等 |