共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

北極域における海氷・海洋の観測モデル融合研究
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 JAMSTEC北極環境変動総合研究センター
研究代表者/職名 研究員
研究代表者/氏名 渡邉 英嗣

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

菊地隆 JAMSTEC-IACE センター長代理

2

西野茂人 JAMSTEC-IACE 主任技術研究員

3

伊東素代 JAMSTEC-IACE 技術研究員

4

藤原周 JAMSTEC-IACE 技術研究員

5

木村仁 JAMSTEC-IACE 研究員

6

小野純 JAMSTEC-IACE 特任研究員

7

川口悠介 東京大学大気海洋研究所 助教

8

中野渡拓也 北海道区水産研究所 主任研究員

9

上野洋路 北海道大学水産科学研究院 准教授

10

阿部泰人 北海道大学水産科学研究院 助教

11

大島慶一郎 北大低温研 教授

12

深町康 北大低温研 教授

13

平野大輔 北大低温研 助教

研究目的 北極域は地球温暖化の影響を顕著に受けており、海氷減少に代表されるように、海洋環境も急速に変化している。一方でアクセスが困難などの事情から、現場観測で得られるデータは限られており、数値モデルによる環境変動の再現性もまだ十分とは言えない。本研究課題では、個々の組織単独では実施困難な多角的かつ包括的な視野での北極海を対象とした共同研究を推進し、現場観測と数値モデリングのさらなる融合を目指して、発展的な議論を深めることを目的とする。
  
研究内容・成果 1.係留系観測、衛星観測および数値モデル実験結果に基づき、チャクチ海東部のアラスカ沿岸域で形成される冬季水の特性と形成プロセスについて調べた。その結果、特にバロー峡谷の近傍では、ともに北東風に起因するポリニヤ形成(海氷生産)と大西洋水湧昇に伴った水塊変質が生じることを見出した。すなわち太平洋側に位置するにもかかわらず、太平洋・大西洋起源水双方の影響を強く受けた当該海域固有の冬季水が形成されていることを明らかにした。

2.船舶観測で得られたアラスカ沖の低気圧性暖水渦の詳細な観測データを解析した。その結果、渦中央部では流速の鉛直シアーで生じる乱流混合によって有光層に栄養塩が運ばれ、大型植物プランクトンの生産が維持されることがわかった。一方、渦周縁では二重拡散混合に伴う栄養塩供給により、小型植物プランクトンが増加することを明らかにした。

3.観測データを考慮した気候モデルを用いて季節スケールでの北極海の海氷予測システムを開発・改良し、予測可能性と予測精度に影響を与える物理過程を調べている。これに合わせて海氷だけでなく、グローバルな大気海洋変動の予測可能性も評価していく予定である。

4.船舶観測、衛星観測および大気再解析データを解析することで、チャクチ海での太陽放射加熱による太平洋水の水塊変質が、西部北極海への熱輸送に重要であることを明らかにした。また太平洋起源水の輸送の実態をより詳細に明らかにするために、チャクチ海北東部の陸棚縁辺部に設置された係留系データの解析を現在実施中である。
  
成果となる論文・学会発表等 【論文】
Hirano et al. (2018): Winter water formation in coastal polynyas of the eastern Chukchi Shelf: Pacific and Atlantic influences. Journal of Geophysical Research–Oceans, 123, doi:10.1029/2017JC013307.

Nishino et al. (2018): Biogeochemical anatomy of a cyclonic warm-core eddy in the Arctic Ocean. Geophysical Research Letters, 45, pp11284–11292, doi:10.1029/2018GL079659.

Ono et al. (2019): Mechanisms for and predictability of a drastic reduction in the Arctic sea ice: APPOSITE data with climate model MIROC. Journal of Climate, 32, pp1361–1380, doi:10.1175/JCLI-D-18-0195.1.

Tsukada et al. (2018): Interannual variation in solar heating in the Chukchi Sea, Arctic Ocean. Polar Science, 17, pp33–39, doi:10.1016/j.polar.2018.06.003.