共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
結晶光学軸分布測定みた多結晶から単結晶氷への成長 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 大阪大学大学院・工学研究科 |
研究代表者/職名 | 招へい教授 |
研究代表者/氏名 | 塚本勝男 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
佐﨑元 | 北大低温研 |
研究目的 | 微細な氷の結晶が合体集合して最終的に単結晶の氷になることも多い。その際、微結晶が幾何学的選択で伸張方位が揃うことは鉱物学で古くから知られている。しかし、結晶軸をもうまく回転させて揃えながら単結晶として成長するメカニズムはよく理解されていない。 最近、本申請者らが開発して半導体結晶の評価に成功した高速結晶光学軸分布マッピング法は、光学軸のわずかな変化に敏感なので、氷の単結晶化のミクロな研究にも向いている。その方法を結晶化装置と組み合わせて、多結晶から単結晶化への転移メカニズムを光学主軸の変化から研究するのが目的である |
研究内容・成果 | 1. 光学主軸分布測定法(OMA: Optical Main Axis Mapping)の氷結晶成長への適用フィージビリティスタディ 半導体のGaNやSiC結晶をX線で構造解析すると対称が高い6方晶系の結晶として扱われている。しかし、これらの結晶は光学的には1軸性結晶であるにもかかわらず、本代表者らが開発している超高速OMAで調べると、対称がわずかに低下した2軸性結晶であることが分かってきた。結晶成長にとって興味あることは、この低下が成長方位に大きく依存することである。氷結晶もその観点で興味があるが、初年度の本共同研究では、この新たな光学法が結晶軸のわずかな回転に敏感であることを利用して、多結晶氷が単結晶になる過程のメカニズム解明のフィージビリティスタディをおこなう。 図1に結晶光軸と光学主軸の関係を正常光速度分布(円)と異常光の光速度分布(楕円)を図で示した。結晶構造的なc-axisが光学主軸Eとのなす角度の分布が光学主軸分布である。1軸性結晶ではその角度はゼロである。氷の結晶構造は、本来、六方晶系であり光学的には結晶は一軸性でもあるはずである。 2. 氷多結晶成長への応用 この光学主軸分布測定を位相分布とともに氷の融解に動的にとらえた一例を図2に示す。左図が位相分布、この場合、わずかな結晶の厚みの違いに相当する。右図は同時に得られる光学主軸分布である。左右の図を対比してみると、厚みが異なる領域でも光学主軸では変化していない領域、逆に、厚みは同じであるが、光学主軸はわずかにズレている領域などが容易に観察される。これらの区別は両者の効果が合わさって観察される光干渉法や偏光顕微鏡法では区別が難しいが、このOMA法では容易にかつ高速(10万frame/sまで可能)に区別できる。 図3には微細な氷微結晶が成長する様子を動的にとらえた例を示した。まず、左の図では微細な針状結晶(6回対称の結晶とは見えない!)が多数発生しているだけでなく、光学主軸の異なる楕円のパターンが散見される。初期的な解析では、これらの楕円パターンが消える頃に結晶のわずかな結晶の回転がおこり右図のように結晶方位がそろってくるように見える。 3. 結論 OMA法を初めて氷の成長や天然雪の構造の解析に使った結果、他の方法では難しい結晶の位相差と光学主軸の区別が容易であることは、この方法の大きな利点となることが分かった。しかも超高速で記録できることは、今後、超高速の相転移の研究にも適しているといえよう。 |
成果となる論文・学会発表等 |
<国際・国内会議> ・ K. Tsukamoto, Optical Characterization of GaN and SiC Crystals by Optical Axis Mapping, ICMaSS2017, Nagoya, Sept. 29- Oct. 1, 2017. ・ 塚本勝男、今西正幸、村山健太、森勇 介 、結晶光学軸方位分布からみたGaNやSiCの 光学異常 、JCCG-46、仙台、2017年11月27日. ・ K. Tsukamoto, Optical in-situ observation of crystal growth interfaces, International Symposium & School on Crystal Growth Fundamentals (ISSCGF2018), Akiu Sendai, November 3-7, 2018. |