共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
海洋低次生態系における食物網構造の決定と水銀濃縮過程の解明 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 国立水俣病総合研究センター |
研究代表者/職名 | 特別研究員 |
研究代表者/氏名 | 多田雄哉 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
丸本幸治 | 国立水俣病総合研究センター | 室長 |
2 |
力石嘉人 | 北大低温研 | 教授 |
研究目的 | 本研究の目的は、海洋生態系の基部(低次生態系)を構成する、植物プランクトン、動物プランクトン、バクテリアなどの微小生物を対象に、アミノ酸の安定窒素同位体比を測定することで、各微小生物の栄養段階を求め、低次生態系における食物網の構造を解明することである。加えて、微小生物細胞におけるメチル水銀 (MeHg) の濃度を測定することで、プランクトンへの水銀の生物濃縮過程を明らかにする。これらの成果は、現在、情報が稀少である「海洋低次生態系における食物網および水銀の生物濃縮過程」の正確な理解に貢献できる。 |
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研究内容・成果 | 試料採取は、2018年7月及び10月に、熊本県の水俣湾中央において、プランクトン採取を行った。表層海水30 -1000 Lを採取し、異なる目合いのプランクトンネットを用いて、10-100 μm、100-330 μm、>330 μm画分のプランクトンを採取した。採取したプランクトンを遠心により濃縮し、凍結乾燥したものを、アミノ酸安定窒素同位体比分析試料とし、GF-75ガラスファイバーフィルターに濾過・捕集したものをMeHg分析用試料とした。 アミノ酸安定窒素同位体比に関しては、アミノ酸抽出、誘導体化後、GC-IRMSによる安定同位体比分析を実施し、MeHg濃度分析に関しては、プランクトンをアルカリ溶解した後、ジチゾンを用いた抽出、エチレーション後、HgをTenaxトラップに吸着させ、GC-AFSで分析した。10月に採取したプランクトン試料に関しては全ての画分について分析し、7月に採取した試料に関しては、10-100 μm画分の試料を解析した。プランクトン群集組成に関しては、試料の容量不足などの理由で解析できなかったが、微生物群集に関しては次世代シーケンサーを用いた解析を実施し、現在解析中である。 アミノ酸安定窒素同位体比分析及びMeHg分析を実施するにあたり、試料の量に関しては、0.1-1.0 mg程度あれば、同位体分析およびMeHg分析が可能であることが確認できた。アミノ酸安定窒素同位体比分析の結果、10月の試料について、10-100 μm、100-330 μm、>330 μm画分のプランクトンの栄養段階は、それぞれ1.4、1.7、2.3であり、7月の10-100 μm画分の栄養段階は1.6であった。これらのことから、プランクトンのサイズが大きくなるに従って、栄養段階が上位になることを定量的に示すことができた。また、MeHg分析の結果、10月に取得した10-100 μm、100-330 μm、>330 μm画分のプランクトンのMeHg濃度は、それぞれ3.0 ng/g、8.2 ng/g、1.2 ng/gであり、7月の10-100 μm画分の濃度は3.3 ng/gであった。これらのことから、特に、比較的サイズが小さいプランクトン画分 (10-330μm) において、MeHgの生物濃縮が起こっている可能性が示唆された。 これまで、魚介類に比べて、プランクトン等の比較的サイズが小さい生物に関する正確な栄養段階の情報は希少であった。本研究では、クリーンな試料採取と低温研の改良型GC-IRMSを用いた解析を実施することで、低次生態系を構成する生物群の栄養段階を決定することができた。本研究で構築した試料採取や分析手順を基準とし、今後、共同研究を推進し、海洋低次生態系における栄養段階の決定(定量化)とメチル水銀濃縮過程を明らかにしてゆく。 |
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成果となる論文・学会発表等 | 特になし |