共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
極低温星間鉱物表面に物理吸着した水素分子のオルソ-パラ転換 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 分子科学研究所 |
研究代表者/職名 | 准教授 |
研究代表者/氏名 | 杉本敏樹 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
相賀則宏 | 分子科学研究所 | 博士研究員 |
2 |
櫻井敦教 | 分子科学研究所 | 助教 |
3 |
加藤史明 | 京都大学(分子科学研究所教育委託) | 大学院生 |
4 |
佐藤 宏祐 | 京都大学(分子科学研究所教育委託) | 大学院生 |
5 |
渡部直樹 | 北大低温研 |
研究目的 | 極低温の星間分子雲には固体微粒子(星間塵)が存在し,その表面で始原的な星間分子や多くの有機分子が生成している.申請者らの研究により,この星間塵表面に物理吸着した水素分子のオルソ-パラ転換が,分子雲環境における分子進化の反応速度と反応選択性に大きな影響を及ぼすことが明らかになってきたが,温度や構造が異なる様々な星間塵表面において,オルソ-パラ転換がどのような時間スケールで進行するのかについて系統的・定量的な理解には至っていない.本研究では物理吸着水素分子の分光検出に適したモデル表面の準備を行い、分子雲における水素分子のオルソ/パラ状態比の決定機構を解明する糸口をつかむことを目的とする. |
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研究内容・成果 | 本年度の5月に,京都大学理学研究科化学専攻から分子科学研究所へ異動した.この異動に伴い,物理吸着水素分子の和周波発生振動分光計測を行う実験装置の移設・改良を行った.まず,極低温領域の様々な温度で水素分子を物理吸着させ,オルソ-パラ転換速度を系統的・定量的に測定するための超高真空チャンバーの構築を行った.今回の異動に伴い,希釈冷凍機ではなく溜め込み式の液体ヘリウムをもちいた冷却機構に変更することにより,試料位置の振動をサブマイクロメートル以下に低減させることに成功した.さらに,和周波発生振動部能を行うための超短パルスレーザーシステムを刷新した.具体的には,従来使用していた150 fsのパルス幅を持つチタンサファイアレーザー光源を35 fsのチタンサファイアレーザー光源に交換し,光パラメトリック発生・増幅システムを用いて近赤外-中赤外-遠赤外領域で波長可変のパルスレーザーシステムを構築した.これにより,物理吸着水素分子の分光検出に使用する2.5μm程度の波長領域において,従来の3μJ/pulseよりも約一桁強度が増大した30μJ/pulseのレーザー強度を達成することができた.さらに,1パルスあたりのレーザー強度のふらつきがを1%以下に低減することに成功した.こうした実験システムの抜本的改良により,高いS/N比で高感度かつ安定的に和周波発生振動分光法でオルソ-パラ転換過程を研究する準備を整えることができた. 上記の実験系を用いて物理吸着水素分子を分光計測する際には,反射配置での測定が必須となる.今回,北大低温研のPM-IRAS装置を用いて,反射配置で分光計測するための最適なモデル試料を検討した.その結果,凹凸の多い紛体系をベースとしたモデル星間塵試料では,吸着分子種をとらえることが困難であり,平坦基板を用いることが適切であることが判明した.今後の研究展開において,炭素質をベースとした星間塵のモデル基板としては,Pt(111)などに形成させた単層カーボン(グラフェン)が適切であると考えている. |
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成果となる論文・学会発表等 |