共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

Ka帯偏波雲レーダと地上観測を用いた氷晶粒子の特性の解析
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 名古屋大学宇宙地球環境研究所
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 篠田太郎

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

川島 正行 北大低温研 助教

2

馬場 賢治 酪農学園大農食環境学群環境共生学類 准教授

研究目的 Ka帯偏波レーダは、波長が8.6 mmと従来の気象レーダに比べて短いため、降水粒子よりも粒径の小さい氷晶粒子の特徴を観測することが可能である。本研究では、2018-2019年の冬季にKa帯偏波レーダを江別市の酪農学園大学に設置して連続観測を実施するとともに、北海道大学低温科学研究所の降雪粒子観測機器(船舶レーダー、2DVD、電子天秤など)との同期観測を行う。-5〜-20℃という板状や柱状の氷晶粒子が成長しやすい温度範囲において、地上で観測される降雪粒子の特徴と上空の偏波パラメータの関連についての解析を行うことが本研究課題の目的である。
  
研究内容・成果  2018年11月に名古屋大学宇宙地球環境研究所のKa帯偏波レーダを酪農学園大学の敷地内に移設した。レーダの設置地点からは低温科学研究所の方角(方位角277度、距離13.75 km)の見通しが良く、低仰角の観測が可能である。同年12月5日にレーダへの電気工事を行い、12月6日から現在(3月20日)に至るまでほぼ連続して10分毎の12仰角ボリュームスキャン観測と低温科学研究所方向のRHI(鉛直断面)観測を実施している。低温科学研究所には降雪粒子観測機器(船舶レーダ、2DVD、電子天秤)などが設置されており、Ka帯偏波レーダにより観測される偏波パラメータ(反射強度ZH、反射因子差ZDR、偏波間相関係数RHOHV、偏波間位相差変化率KDP)と2DVDによって取得される粒子の形状や数濃度の比較を行っていく予定である。
 2019年1月9日から11日にかけて、低温科学研究所の川島先生を訪問させていただき、同研究所の屋上において降雪粒子の接写観測を行った。1月10日の夜には多量の降雪があり、この間に札幌管区気象台では33 cmの積雪増を記録した。接写観測では、雲粒付きの板状や柱状の粒子が凝集した雪片(雲粒付き雪片)が多く観測された。落下時の雲粒付きの雪片の横軸長と縦軸長は同程度(もしくは横軸長が若干長い)であると考えられるため、対応するZDRは0 dB、KDPは0 deg./kmに近い値を示すと考えられる。Ka帯レーダの観測結果では、低温科学研究所付近の上空ではZHは30 dBZ程度と大きな値を、ZDRの値はおよそ0 dB、KDPの値も0.5 deg./km程度と、雲粒付き雪片の存在に対応する値を示していた。しかしながら、本事例では高度方向でZDRやKDPの変化はほとんどなく、上層において雲粒の付着していない純粋な板状や柱状の氷晶粒子の存在を示唆する観測結果が得られなかった。このような状況における氷晶粒子の成長過程について、改めて検討を行っていく必要があると考えている。
 現在、Ka帯レーダのデータは、レーダ本体内のハードディスクに蓄積されている。ネットワーク環境の問題から、データ自体へのアクセスは難しいために、レーダデータの詳細な解析は未だ行えていない。2019年4月中旬にレーダを移設する際に、データを名古屋大学のサーバに移動させるとともに解析を開始する予定である。本研究は2019年度の低温科学研究所一般共同研究課題にも申請し、採択していただいている。今後の解析は2019年度の一般共同研究課題に行う予定である。また、同様の研究課題を、科学研究費補助金基盤研究Bに申請を行っており、採択された場合には2019年度の冬季にも同様の観測を行うことを計画している。
  
成果となる論文・学会発表等 ありません。