共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
低温領域におけるC60フラーレンの水素化反応 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 理化学研究所 仁科加速器研究センター |
研究代表者/職名 | 専任研究員 |
研究代表者/氏名 | 中井陽一 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
渡部直樹 | 北大低温研 | 教授 |
研究目的 | 炭素フラーレンで最も安定なC60は,近年,宇宙での存在が確認され,ほかの炭素系物質と同様に星間物質として重要であると考えられている.またC60に水素原子が付加した水素化フラーレンの存在もC60発見後の比較的早い段階に提案されているが確定的な結論に至っていない.C60の水素原子付加(水素化反応)について,CH伸縮振動領域の赤外分光による水素化の進行を追跡する実験研究からスペクトル形状は温度に依存することがわかり,水素化の進行度の違いが示唆された.さらに実験装置に改良を加えて水素化反応の指標であるCH伸縮バンドスペクトルの温度依存性などの系統的測定を行うことを目的とした. |
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研究内容・成果 | 冷凍機に接続したままのC60薄膜を作成する金属基板を,C60薄膜を昇華させることが可能な温度まで昇温可能にするために,サファイア棒を基板と冷凍機ヘッドの間に挿入した基板支持ユニットを作製し,その加熱および冷却試験を行った. サファイアは100K以下で熱伝導がよくなり,逆にそれ以上の温度では熱伝導が悪くなる.その性質を利用することで,サファイアを挟んだ2つの金属に対して,低温領域では熱伝導性を高め,高温領域では熱絶縁性を高めるということができる.我々は,冷凍機ヘッドに接続する銅製部品とC60薄膜を生成するアルミニウム基板を支持する銅製マウントの間に直径10mm,長さ30mm程度のサファイア棒を挿入することで,金属基板を10K程度に冷却し,かつ,冷凍機ヘッドを200K以下に保ったままで金属基板を600K程度まで昇温させることを可能にすることを考えた.試験用の基板支持ユニットでは,サファイア棒を挟んで,冷凍機に接続する銅製円盤状部品とアルミニウム基板を支持する金属マウントを模した銅製円盤状部品を設置し,細いステンレス棒ネジを用いて双方の銅製部品の位置を固定している.昇温用ヒーターは基板支持用金属マウントを模した銅製部品に固定した. 試験用ユニットを用いた冷却および昇温テストの結果,11K程度までの冷却が可能であり,基板支持側の銅製部品を600Kに昇温しても,冷凍機を動作させておくと,冷凍機側の銅製部品の温度は130K以上には上昇せず,さらに冷凍機ヘッドは100K程度以下に保たれていた. 他の研究課題との兼ね合いのため,申請当初予定していた改良型C60水素化反応装置の試験とC60水素化反応実験は当面延期することになったが,この課題で実現された基板支持ユニットは,さらに改良されたものが共同研究先の他装置内の基板支持ユニットとして利用されている. |
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成果となる論文・学会発表等 |
Y. Nakai, N. Watanabe, Y. Oba, “Laboratory experiment for hydrogenation of C60 fullerenes deposited on a solid surface under low temperature conditions”, The Olympian Symposium 2018 on "Gas and stars from milli- to mega- parsecs", 2018年5月31日 中井陽一,渡部直樹:“低温薄膜状 C60 固体にトラップされた水素分子の振動回転励起の赤外吸収スペクトル”,原子衝突学会第 43 回年会, 2018年10月13日 |