共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

北海道厚岸湖におけるシアノコバラミン生合成微生物の低温環境適応に関する研究
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 日本大学
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 中川達功

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

土屋雄揮 日本大学 助教

2

高橋令二 日本大学 教授

3

福井学 北大低温研 教授

研究目的 沿岸海域の砂泥表層にはシアノコバラミンが高い濃度で分布し、シジミやアサリは砂泥内のシアノコバラミンを体内に取り入れことにより、シアノコバラミン濃度が高い海産物となっている。しかしながら、沿岸海域の砂泥は遠洋海水に比べ微生物フローラが複雑なため、シアノコバラミン生産を担う微生物の特定は困難であった。そこで、本研究ではPCRに依存しないメタゲノム解析を新しい技術として使用し、アサリやカキの養殖業が盛んな北海道厚岸湖の砂泥内のシアノコバラミン生産を担う微生物を調べることを目的とした。さらに、低温性シアノコバラミン生産アンモニア酸化アーキアの培養を試みた。
  
研究内容・成果 北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの厚岸臨海実験所を利用し、8月に厚岸湖のアマモ群落の底泥を採取した。実験所内で採取したコア試料から1 cmずつ底泥を切り取り、海底から0〜1 cm層、1〜2 cm層、2〜3 cm層、3〜4 cm層としてそれぞれを容器に回収し、研究室までクーラーボックスに入れて冷却し運搬した。各層から核酸を抽出し、IlluminaのNextera DNA Flex Library Prepを使用してライブラリーを調製し、次世代シークエンスMiSeq、およびMiSeq V2 Regent kit (150×2) を用いてショットガンメタゲノム解析を実施した。MiSeqによって得られたデータ (read) は、CLC Genomic Work bench 8 (CLCBio,QIAGEN) を用いて90 bp未満の配列を除いた。その後CLC Genomic Work bench 上のLocal BLAST (Blastxを使用) を実施しE-valueが10e-10未満の微生物を特定した。シアノコバラミン生合成遺伝子としてデータベースはNCBIからcobalamin-5-phosphate synthase [adenosylcobinamide-GDP ribazoletransferase] (cobS) のアミノ酸配列をダンロードした。0〜1 cm層のみに対して底泥5 g をアンモニア酸化アーキア用培地 (NH4+:200 µM) にスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)とカタラーゼを加えた培地α-ケトグルタル酸を加えた培地それぞれに添加し、4℃、10℃、20℃で培養した。
アマモ群落の底泥から高頻度で検出されたcobS遺伝子は硫酸還元菌であることが明らかになった (0〜1 cm層: 44%, 1〜2 cm層: 81%, 2〜3 cm層: 33%, 3〜4 cm層: 80%)。アンモニア酸化培地で培養後、4℃ (SOD, カタラーゼ) からアンモニア酸化バクテリアのcobS遺伝子が検出された。以上の結果より、アマモ群落の底泥において硫酸還元菌が主要なシアノコバラミン生産菌の可能性が示唆された。低温 (4℃) ではアンモニア酸化バクテリアがシアノコバラミン生産に関与している可能性が示された。
  
成果となる論文・学会発表等