共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
多周波・偏波レーダを利用した固体降水観測技術の高精度化 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 名古屋大学宇宙地球環境研究所 |
研究代表者/職名 | 主任技師 |
研究代表者/氏名 | 民田晴也 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
川島正行 | 北大低温研 | 助教 |
研究目的 | 偏波レーダシグナルを利用した粒子種別毎の粒径分布の遠隔観測技術の実現は、レーダ降雪強度推定の高精度化と雲微物理過程の観測的理解深化につながる。本研究では、偏波降水レーダと地上固体降水粒子の同期観測を実施、固体降水のミリ波・マイクロ波散乱特性を理論的・観測的に調べ、レーダ降雪強度推定と降水粒子の種別識別アルゴリズム開発で参照できる粒子物性と散乱特性データベースを開発する。レーダ観測は9GHz, 24GHz降水レーダに加え、乾雪の感度が期待できる35GHz雲レーダを利用した多波解析から固体降水のレーダシグナルの特徴理解をより深める。 |
研究内容・成果 | 名古屋大学から固体降水粒子の立体形状・落下速度・粒径分布を観測するMulti-angle Snowflake Imager(MSI)と24GHzマイクロレインレーダを低温科学研究所に設置、35GHz偏波雲レーダ(Kaレーダ)を低温研の東14kmに位置する酪農学園大学に移設、低温研を検証サイトとした降雪観測を実施した。低温研機器は、2次元ビデオ雨滴粒径分布計(2DVD)、電子天秤型降雪強度計(EB)、9GHzレーダのデータが収集された(機器配置を図1に示す)。また、国土交通省のXRAIN(9GHz偏波降水レーダ)のデータが利用可能である。降雪シーズンを通して、地上粒子観測とレーダ3波(9,24,35GHz;偏波レーダは名大35GHzとXRAIN 9GHz)による降雪現象の同期観測が達成できた。 2018年度観測データは品質確認に留まっているが、2017年度の金沢観測(MSIと名大Kaレーダの同期観測)から北陸豪雪の事例を選びFDTD電磁解析法を用いた散乱計算を実施した(立体粒子形状を図2に例示)。散乱計算では粒子密度も重要であるが、先ずは密度一定として粒子形状の感度実験を行った。図3にマイクロ波(波長30mm)とミリ波(波長8mm)の水平/垂直偏波の後方散乱断面積比(σh/σv)の出現分布と再現Zdrの時系列を例示する。Zdrは個々の粒子後方散乱断面積を粒径分布積算して得た。マイクロ波のσh/σv分散は粒子形状の縦横比分散より小さく(縦横比結果は未掲載)、そのZdr再現値は0dB(σh=σv)に集中する傾向がある。このレーダ波長と降雪粒子サイズの相対関係では粒子形状感度は鈍感で楕円体形状近似が適応でき、形状に関しては先行研究からの発展性は弱い。対して、ミリ波のσh/σv出現分布は横長粒子(>0dB)の領域で広く分散、その出現分布は粒子縦横比と整合するため形状感度は高い。結果を示さないが、名大Kaレーダ観測Zdrはマイクロ波の再現値寄りの値を示した(トレンドは一致)。この再現と観測値の乖離は、ミリ波はより小さな粒子に有意な感度があるが、立体形状再現が難しい幅1mm未満の粒子(σh≒σv)を排除していることが原因である。この感度実験から、ミリ波では幅0.5mm以上の粒子を含める必要性が示唆され、今後、小粒子は回転楕円体で形状を与えZdr再現性を確認する。散乱厳密解を得るためには、粒子密度観測の高精度化が必要である。低温研2DVD(粒子体積)とEB(粒子重量)から算出した観測サイト校正済の密度を基準として、MSIによる粒子体積指標の改善(密度精度向上)を評価する。MSIは2DVDに比べ粒子体積の代表性は高いが、立体形状再現できる粒子数は2DVDに比べ少ない課題がある。今後、散乱特性の理解を深め、固体降水レーダ観測技術向上を目指す。 |
成果となる論文・学会発表等 |
民田晴也, 久島萌人, 篠田太郎, 久保守, 川島正行, 藤吉康志, 2018: 降雪粒子の立体形状とマイクロ波散乱特性, 日本気象学会2018年度秋季大会, 仙台国際センター, 2018.11.1 民田晴也, 久島萌人, 篠田太郎, 久保守, 川島正行, 藤吉康志, 2018: レーダ降雪観測の高度化を目指してー降雪粒子のミリ波散乱特性の特徴ー, 日本気象学会 中部支部研究会, 三重大学, 2018.11.30 藤吉康志, 越田智喜, 民田晴也, 2018: マイクロレインレーダ(MRR)を用いた降雪強度測定, 日本気象学会 北海道支部研究会, 札幌管区気象台, 2018.12.17-18. |