共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

ドローン空撮を用いた沿岸域の流れ場の解明
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 九大応力研
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 木田新一郎

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

石元伸 九大総理工 修士二年

2

伊佐田智規 北大北方生物圏フィールド科学センター 准教授

3

三寺史夫 北大低温研 教授

研究目的 河口域を中心にドローン空撮を実施し、河川を通じて陸面から海洋へと流入する陸域起源の水塊に起こる変質過程とその拡散メカニズムの解明を目指す.沿岸域は陸面と海洋の接続域としての役割を持ち、河川水と海水間で流れ場の相互作用が起きている領域である.しかし、沿岸域の流れ場は空間スケールが小さく、変化が急なため、その実態を空間的に把握することは難しく、支配的な力学メカニズムがよくわかっていない.そこで本研究では、ドローンを用いることで、これまで観測できなかった解像度と空間スケールで、沿岸域における河川水の拡散メカニズムの実態を明らかにする.
  
研究内容・成果 沿岸域は陸面と海洋の接続域としての役割を持ち、河川水と海水の境界線(河川フロント)の位置は気象擾乱・潮汐によって常に変化している.陸から海への物質循環とともに沿岸の生態系を理解するにはこの河川フロントの変動メカニズムの理解が不可欠である.湿原河川である別寒辺牛川の河川水が流入する厚岸湾・厚岸湖では、河川水と海水間では海色が大きくことなることがこれまでの観測から知られており、河川フロント付近では海色の変化が大きいことが予想される.そこでドローン空撮で高解像度の可視画像を取得することで河川フロントがもつ空間構造とその水塊の変質過程を把握できるのではないかと考え、2017年10月にドローン空撮を合計13か所にて実施した.本年度はこの観測によって得られた可視画像を解析し、ドローンカメラを用いて河川フロントの位置の特定が可能かどうかを検証した.
高度100mから真下を空撮して得られた画像は一回のフライトで横800m縦500mほどの合成画像である.空間解像度は僅か2.5cmと、これまでの観測に比べて極めて高解像度のデータが取得できた.空撮画像からは、可視画像が海色の空間分布を捉えていることが確認でき、ドローン空撮を用いることで河川フロントの観測が十分に可能であることがわかった.一方、気泡や海底地形が写っており、画像間で明度の差も生じていた.補正を行うことで、広域にわたって河川フロントを挟んで異なる明度の空間分布、そして勾配を見積もることで明度が急激に変化する河川フロントの位置が特定できた.今回の観測からは厚岸湾の海峡付近において河川フロントが長さ20mほどの波長で波打っていること、そして河川水と海水がわずか数mの境界層でもって接していることが明らかになった.さらに得られたRGB値に対して、衛星海色観測に類似した解析手法を活用することでフロントを挟んだクロロフィル濃度や有色溶存有機物の変化、を推測することができた.濃度の違いは定性的には整合的だが、推測値が果たしてどの程度現実的なのかは、今後海水の直接観測から検証を行う必要がある.
事前に河川フロントの位置がおおまかに把握できれば、ドローン空撮を行う領域が絞られ、河川フロントをより効率的かつ詳細に観測できる.そこでタイムラプスカメラを2台、厚岸大橋に2018年9月の一か月間設置し、一分間隔で海峡の海面を橋の両側から撮影した.今後、この取得された画像から河川フロントが厚岸大橋付近に出現するタイミングの検証を進める予定である.
  
成果となる論文・学会発表等 Japan Geoscience Union Meeting 2018, Observation of surface water properties from river mouth to the ocean using drones, Ishimoto, S., S. Kida, H. Mitsudera, and K. Tanaka
海洋学会 2018秋学会, ドローンによる沿岸海洋過程の高解像観測手法の開発, 石元伸,木田新一郎,三寺史夫,田中潔
大槌シンポジウム, 2018, 沿岸域に着目した粒子追跡シミュレーションについて, 木田新一郎(招待講演)