共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

ニカメイガ越冬幼虫体液の氷結晶成長抑制に関わる物質の探索
新規・継続の別 継続(平成28年度から)
研究代表者/所属 島根大学生物資源科学部
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 泉洋平

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

落合正則 北大低温研

2

佐崎 元 北大低温研

研究目的 昨年までの研究で凍結耐性を持たないニカメイガ非休眠幼虫の体液は温度依存的に氷結晶成長速度が上がるのに対して、越冬幼虫では-17℃までは結晶成長は観察されず-17℃を下回ると全体が一斉に凍結することを明らかにした。この結果は不凍タンパク質様の物資が関与していることが示唆される。しかしながらデータベースからの情報では、ニカメイガにおいて既知の不凍タンパク質に類似した物質はみつからなかった。本研究では越冬幼虫の体液に含まれるタンパク質を様々なレベルで変性および分解し、それによりサーマルヒステリシスが観察されなくなる条件の探索を行い、関与する物質の同定を目的とする。
  
研究内容・成果  昨年までの一連の研究成果をもとに、以下の研究を行った。1.各種熱処理後の越冬幼虫体液の氷結晶成長の観察、2.各種熱処理後の越冬幼虫体液のSDS-PAGEによる比較。
 両実験とも越冬幼虫から体液を取り出し、40、50、60℃で30分熱処理した後に遠心分離し上清を回収し、体液のサンプルとした。実験1.では調整したサンプルをガラスキャピラリーに封入し、Growth Cell内にて様々な温度条件で結晶成長を観察した。その結果、40℃で熱処理しても無処理の体液との間に成長速度の違いは見られず、-10℃以下になるまで結晶成長そのものが観察されなかった。しかし、50、60℃処理では結晶成長が-10℃よりも高い温度で観察されるようになり、温度が上がるにつれてその速度は、昨年観察した非休眠幼虫の体液の結果に近づいた。これらの結果から、越冬幼虫の体液の結晶成長は、50℃から60℃あたりで変性されるタンパク質により抑制されていると考えられた。。
 二つ目の実験では、非休眠幼虫および各種温度処理を行った越冬幼虫体液中をSDS-PAGEにより比較した。その結果、50℃および60℃処理において消失しているいくつかのバンドに含まれるタンパク質が氷結晶成長抑制と関連していると考えられたが、詳細な分析については現在行っている途中である。
  
成果となる論文・学会発表等