共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

ラマン散乱法によるグリーンランド南東ドーム浅層コアの気泡の空気組成の測定
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 北見工業大学
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 堀彰

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

大野浩 北見工業大学 助教

2

飯塚芳徳 北大低温研

研究目的 極地氷床コアの氷の年代決定を、Bender(2002)が報告した日射量とO2/N2比(空気組成)との間の高い相関に基づき決定する方法が提案されている。空気組成の変化は浅層コアでのクローズ・オフの過程で起こっていると考えられているが、まだ実験的に確認されていない。本研究では、2015年に掘削されたグリーンランド南東ドームの浅層コアの気泡の空気組成を調べ、同位体測定等から明らかにされている年代および季節変動と照合して、日射量の多い夏季と少ない冬季の層の気泡の空気組成をラマン散乱測定により求め、日射量と空気組成が相関するメカニズムを明らかにすることを目的とする。
  
研究内容・成果  2015年にグリーンランド南東ドーム(SEドーム)で掘削された全長91mの浅層コアの氷化深度(86m)より深い試料に含まれる気泡に対してラマン散乱測定をお行った。具体的な深さは、冬季に相当する深さ88.1m、夏季に相当する88.3m、最深部の90.8mを用意した。試料は液体窒素が蒸発した窒素ガスのフロー下で-30℃に冷却した。
 深さ88.1mの試料に含まれる気泡に対して行った測定では、窒素分子のスペクトルは得られたが、酸素分子のスペクトルは観測できなかった。これは気泡が試料内部でネットワークを形成しており、最終的に表面の外気(窒素雰囲気)とつながっていることが原因と考えられた。そこで、顕微鏡で詳細に観察すると、目視では孤立しているように見える気泡が、試料内で繋がっていることが確認された。そこで次に、目視レベルでは気泡が完全に孤立して存在しているように見える深さ90.8mの試料の顕微鏡観察を行った。この試料でも気泡のチャンネルが多く観察されたが、他の気泡とのつながりが確認できない孤立した気泡を探して、この気泡に対してラマン散乱測定を行った。しかし、この気泡についても酸素分子のスペクトルは観測できなかった。その原因としては、顕微鏡レベルでは確認できなかった気泡のチャンネルが分子レベルで考えると存在する可能性が考えれられる。
 今回の測定では酸素分子のスペクトルを観測することはできなかった。これは測定した気泡が完全に孤立しておらず、外気と通じていたためであると考えられる。一般に深い深度の氷では気泡の孤立化が進行し通気性がなくなるため、SEドームにおいてもさらに深い試料を得ることができれば、顕微鏡観察で孤立した気泡を選んで測定することにより、空気組成の変化が観測できると考えられる。


  
成果となる論文・学会発表等