共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

寒冷地沿岸部における石油系炭化水素分解硫酸還元菌に関する研究
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 高知工業高等専門学校
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 東岡由里子

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

久保響子 鶴岡工業高等専門学校 助教

2

福井学 北大低温研

3

小島久弥 北大低温研

研究目的 硫酸還元菌は、嫌気環境に広く分布し有機物の分解に寄与している。特に海洋中においては硫酸還元菌による石油系炭化水素などの汚染物質の嫌気分解が重要になる。しかし、これまで純粋分離されている硫酸還元菌のほとんどは石油系炭化水素を分解しない。また、海洋堆積物の多くが低温条件にさらされているが、炭化水素分解硫酸還元菌についての研究の多くが中温条件下で行われているのが現状である。
本研究では、寒冷地における石油系炭化水素の嫌気分解について新たな知見を得ることを目的とし、主に硫酸還元条件下における炭化水素分解菌の集積培養系の確立を行った。
  
研究内容・成果  2018年11月に、石狩湾沿岸の厚田油田および石狩油田において、原油にさらされた土壌および原油、地下水のサンプリングを行った。群集構造解析のため、これらの試料からDNAを抽出した。原油にさらされた土壌からはDNAを抽出することができたが、原油から直接DNAを得ることは出来なかった。今後は抽出方法を工夫し、DGGE法やクローニングによる群集構造解析に供する。加えて機能遺伝子を標的とした解析により、環境中においてどの炭化水素分解菌が実際に原油を利用しているのか評価を行う。
 サンプリング地で原油と共に湧出していた地下水からは塩分は検出されなかったため、以降の培養は淡水に近い条件で培養を行った。採取した試料を接種源および基質として、硫酸還元条件、硝酸還元条件(共に28℃)および嫌気光合成条件下(30℃)で集積培養を行った。硫酸還元条件下では顕著な増殖が認められなかったが、硝酸還元条件下では培養3日後には目視で確認できるほどの微生物の増殖が確認された。今後は原油に多く含まれる直鎖飽和炭化水素を培養基質として用いることで、炭化水素分解菌のさらなる集積を予定している。加えて低温条件での培養も行い、培養温度によって群集構造に変化が見られるかどうかを確認する。得られた集積培養系の微生物群集をDGGE法で解析するとともに、新規硫酸還元菌および硝酸還元菌の分離を行う。
 嫌気光合成条件下においては、厚田油田の試料を基質とした集積培養から紅色光合成細菌の増殖が認められた。さらに固体培地を用いて分離を進め、現在までに2種の紅色光合成細菌を分離した。今後は16S rRNA遺伝子の塩基配列を決定し、系統的位置を明らかにすると共に、炭化水素を利用する能力があるかどうか分析を進める。
  
成果となる論文・学会発表等